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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

2022-01-01から1年間の記事一覧

所以45

ウリエル・ダ・コスタ、工藤喜作訳『人間生活の実例』Uriel da Costa, Exemplar humanae vitae スピノザの弟妹がネーデルラントから大西洋を渡ったことを思う。〈船の窓ゆたかに冷えて国というつやめく単位ひとつおもいぬ/大森静佳〉 spinozismo; se mi est…

小川楓子『ことり』港の人

接していないか接しているかのすれすれとして『ことり』を読む。〈段ボール引いてあそんで犬ふぐり/小川楓子〉子供の遊びだろう、犬ふぐりで段ボールが引かれた地面や濡れた段ボールの端へ視線を集める。〈夏来る箸でわけあふメンチカツ/小川楓子〉夏が孵…

所以44

日本郵便の島嶼公募は地域基幹職と総合職しか応募できない。 東京が車を運転しやすい街になれば多様性やにぎわいは減衰するだろう。 郵便外務の班長は配達の「速い」「できる」人がなるので、配達の「遅い」「できない」人は、心情面で理解されず、取り残さ…

所以43

take one's proper station、ルース・ベネディクト『菊と刀』の「応分の場を占める」の英語、「応分の場を占める」が和訳か。「各々 其ノ所ヲ得」とも。 9月16日に生命保険会社から新型コロナウィルス感染症の自宅療養についての入院給付金が下りたとメール…

毎日歌壇毎日俳壇2022年9月19日

〈虫鳴いて夜の空き地となりにけり/以太〉が西村和子選で入選していた。井上康明選〈秋の夜の解の公式言うてみる/大戸政子〉秋の夜のさびしさから逃れるための解の公式だろう。〈頂に皇子の墓標や雁渡る/古賀勇理央〉非業の死を遂げた大津皇子の墓標。雁…

朝日歌壇朝日俳壇2022年9月18日

小林貴子選〈台風の行く手行く手にアナウンサー/額田浩文〉アナウンサーと書くことで同じアナウンサーが台風の進路に次々と出現するようにも読める。〈露の世のかくも短き詩を創り/内藤孝〉すぐに消えそうな短さの俳句。長谷川櫂選〈あてもなく大秋晴の一…

山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』書肆侃侃房

東へ夜の特別軍事作戦に出かけた日、『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』を読む。〈踊り場ですれ違うとき鳴る胸のビートがリズム無視してくるよ/山田航〉「リズム無視してくるよ」の野放図さが青春っぽい。〈なけなしの金で乗るバス行き先は廃タイヤ積ま…

所以42

ジェイムソン*1によれば、テクストは、他の仕方ではアクセスできないような歴史性へ私たちを導く、主要な媒介項である。その歴史性は、スピノザ的な意味での不在原因として機能している。その点においてテクストは、私たちの「政治的無意識」を理解するため…

所以41

災害が起きると、ヒエラルキー、行政、公共機関といった社会構造が崩壊しがちだが、その結果、生じがちなのは、メディアのほうじる無法な蛮行という意味の無政府状態ではなく、人々が自由に選んだ協力のもとに結束する、クロポトキンの提唱する無政府状態だ…

所以40

スペクタクルはさまざまなイメージの総体ではなく、イメージによって媒介された、諸個人の社会的関係である。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会』ちくま学芸文庫) スペクタクルは世界観Weltanschanng 個人的現実は、存在しないという限りに…

所以39

注目したのは句点の打ち方。「中上さんの文章は、コルトレーンやアイラーのフリージャズのようにどこまでも自由なインプロビゼーションが続いていく」。『千年の愉楽』(82年)を取り上げ、丁寧に読んでいく。(中上健次、没後30年の「熊野大学」 濃密な…

朝日歌壇朝日俳壇2022年9月11日

高野公彦選〈大谷の打ちしボールを追うカメラオークランドの月も映せり/三船武子〉パン、パンと映像が決まる。〈見張れるを見せつけてをり百均の自動精算機にカメラ付く/前川泰信〉この監視カメラ、電線はつながっていないかも。百均だし。永田和宏選〈昔…

染野太朗『あの日の海』書肆侃侃房

自分の車を自分の家へみしみしとめりこませる人を見た日、『あの日の海』を読む。〈向き不向きを言い合う教育実習生の控室にも白い電話が/染野太朗〉この会話を誰かが聴いているかも、ということだろうか。白さが際立つ。〈生徒らの脳に蛍があふれいて進学…

所以38

東区中郡町、祭の積立金が1軒あたり30万円/年とか、自治会の力が強い。 娘の父母への罰が「もういっしょにあそばないからね」「もういっしょにたべないからね」 闕語法rétricenceとは自分に不利なことには口をつぐむ方法。 商品の価値は生産に要した労働量…

所以37

エスペラントesperantoの中動態medialo、他動詞を自動詞としたり他の品詞から自動詞を作ったりする接尾辞iĝが中動態的な役割を果たすのは分かる。 受動態pasivo、能動態aktivo、中動態medialo 例えばrompi(壊す)の場合, esti rompitaは「だれかに壊された…

水野葵以『ショート・ショート・ヘアー』書肆侃侃房

始末書を書き終えた日、『ショート・ショート・ヘアー』を読む。〈堂々と慰めたあとゴミ箱の深部に埋める二重のティッシュ/水野葵以〉一重だと漏れてきてしまうから。〈七月は動く歩道のスピードで気づけば夏の真ん中にいる/水野葵以〉七月の速度に気づか…

所以36

今日のカルチュラル・スタディーズやポストコロニアリズムが標榜する「グラムシ・ルネッサンス」が政治性を欠いて弱々しいのは、六八年の毛沢東主義の「経験」を払拭してしまおうという、「現行のプロパガンダ活動」に陰に加担してしまっているからにほかな…

所以35

映画「シンデレラ」のボブ髪王女グウェン。最後はグウェン女王になってやりたい統治プランを実行できそうでよかった。ドレス作りだけが女の子のやりたいことじゃない。女の子だって政治をやりたい。 世代・性別・年齢・階級に基づくかつての応分の場が崩壊し…

所以34

娘が「(父母が)〜するのは恥ずかしい」と羞恥心に訴えかける異議申し立てをするようになった。 たとえば、個人経営の店主の常套句、「すみません」。その意味はこうである。「あなたから恩を受けましたが、現代の経済の仕組みの中では、恩返しをすることが…

所以33

2週間ぶりくらいにカフェでコーヒーを飲むと果実感にやられてガブ飲みしてしまう。エクセシオールカフェやドトールでも。 『老人と海』でコンデンスミルクの空き缶に入れられたコーヒーは斯くの如しとか思う。 浜松市立中央図書館駅前分室に『八本脚の蝶』が…

所以32

福沢の三男三八の回想によれば、理想の政治体制についての問いに答えて、「それは無政府だ、政府や法律のあるのは悪いことだ」といって諄々と無政府主義を説いたという。(浅羽通明『アナーキズム』ちくま新書) アナーキスト福沢諭吉 アナーキズムと保守:…

所以31

「考えて」と他人へ言う人はほとんど考えておらず騙されている。「考えなくていいよ」と他人へ言う人は他人を騙すことを考えている。 よく行くスーパーマーケット、フィール*1、バロー*2、マム*3など。ときどきエブリィビッグデー*4やビオあつみ*5やクックマ…

葉冠記

家族が新型コロナウイルス感染症の陽性者となり濃厚接触者となった者の看病の記録、そして自身も陽性者となった罹患の記録である。

toron*『イマジナシオン』書肆侃侃房

トロン『イマジナシオン』書肆侃侃房を読解した。

朝日歌壇朝日俳壇2022年8月28日

馬場あき子選〈真夜中の二時は不可思議我が窓に月光降ればカブトムシも来/戸沢大二郎〉神秘的な真夜中の景。〈山羊の乳もらいにゆきし家いずこ山道消えて家立ち並ぶ/出口真理子〉山羊乳は幼いころの思い出か。佐佐木幸綱選〈店主老い「天野商店」廃業す離…

吉川宏志『西行の肺』角川書店

誌上句会(テーマ「交」)で〈初夏の看護学生泡まみれ/以太〉への方子さんの評を読み、自分の心が穢れていたことを知った日『西行の肺』を読んだ。〈身ごもりし人の済ませし校正の厳しすぎる朱を元に戻しぬ/吉川宏志〉妊婦が胎児を守るために宿した他人へ…

所以30

幾何学を使った反倫理学としてのスピノザと、論理学を使った反倫理学としてのウィトゲンシュタイン。 「〜すべし」と語るより「〜となる」と語った方が信憑性が高い。 主知主義intellectualism、ソクラテス、アリストテレス、トマス・アクィナス、スピノザ、…

所以29

保存の効く農作物の余剰が文字・債務・通貨・国家・官僚制・軍隊・宗教を作ったとするなら、大和朝廷が戦った諏訪の勢力はいかなる種の勢力で、どんな信仰を持っていたというのか。 「姥ヶ浴」というのは、子どものない家の女性が村人にお詫びとして竹を植え…

ストア派における感情について

人間が抱くすべての感情は同意に因る、というのがストア派の見解だ。印刷教材『西洋哲学の起源』にはストア派の「理性と感情」について 怒りの感情とは「自分が不正な仕打ちを受けている」という(誤った)認識に他ならない。その意味で感情は理性と対立する…

所以28

自発的隷従論discours de la servitude volontaireというタイトル、Mr.Childrenやブラックマヨネーズみたいで、それ自体で劇薬。 何百万人もの人々がみじめな姿で隷従しているのを目にするのは、たしかに一大事とはいえ、あまりにもありふれたことなので、そ…