以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

所以4

参議院選挙の期日前投票に行ったら、漫画家・赤松健が自由民主党から全国比例区で出馬していた。私も歳をとる。 『ラブひな』は全巻読んだ。 「ウンチ〇〇八」とは? 〈先制攻撃する(される)恐怖をわかちあい大江戸線の地下駅を行く/藤原龍一郎〉「地球人…

所以3

首がもげるほどうなずいたと大袈裟に描写せざるをえないのは、賛意に確たる根拠を持たないから。 〈青春は苦行であると気づくたび眉間を走り抜けてゆく中央線/笹公人〉、連作「異空間アンプ」文藝春秋2022.7。私にとっての南武線が彼にとっては中央線なのだ…

所以2

梅雨入りの日、玉虫を見つけた。靖國神社で翔んでいるのを見て以来だ。 日本国憲法第25条から「最低限度の」を削除し「すべて国民は、健康で文化的な生活を営む権利を有する。」と改めたい。 府八幡宮の坂下にいた蜜蜂の群れへバイクで突っ込み、右頬を刺さ…

所以1

林檎の半分を知ると皮も断面も知る。林檎一個を知っただけでは皮しか知らず、断面を知らない。 5月8日(日)、鴨江アートセンターの第六回浜松古本市へ顔を出す。壬生キヨム氏が店を出していた。 インチュニブが良い方へ効く。 5月14日(土)、豊川市新桜町…

再読『千夜曳獏』

三月の海に花びら浮いていてこの水はさぞ冷たいだろう 千種創一 この作者のなかにはあたたかい海水だと花びらがすぐに溶けてしまうという観念があるはずだ。 湖にこれから入るかのようにあなたは黒い靴を脱ぎ、寝る 千種創一 はじめあなたは男性だと思い読ん…

第五回尾崎放哉賞受賞作品を読む

第五回尾崎放哉賞入賞作品が発表になった。私が十二月に提出した〈手話の降りつもり暖かな列車/以太〉は入賞した。受賞作品のうち気がかりな句について読む。大賞の〈蝉時雨浴びて秘密基地の入り口/大川 久美子〉は蝉時雨を浴びなければ現れない秘密基地へ…

嶋稟太郎『羽と風鈴』書肆侃侃房

〈止めていた音楽をまた初めから長い時間が経ってから聴く/嶋稟太郎〉初めから聴くけれど、もしかしたら止めたときの記録や栞のような痕跡が残っていたのだろうかと思わせる。〈やがて森の設計図となる旅客機が東の空にともされてゆく/嶋稟太郎〉飛行機の…

類歌による入選取消し

中日新聞2022年1月16日朝刊22面の俳壇歌壇欄に「2021年2月14日付の島田修三選の1席は類歌と判断したため、入選を取り消します」と「お断り」が載せられた。 新聞歌壇・新聞俳壇にときどき掲載される「おことわり」、今回の入選取消理由は二重投稿ではなく類…

荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』書肆侃侃房

〈さくらからさくらをひいた華やかな空白があるさくらのあとに/荻原裕幸〉その空白は決して虚しくない。〈ここはしづかな夏の外側てのひらに小鳥をのせるやうな頬杖/荻原裕幸〉「夏の外側」という疎外感がなじむ。〈皿にときどき蓮華があたる炒飯をふたり…

毎日歌壇2021年12月20日

加藤治郎選〈きみにだけ見える青信号がありどんどん行ってしまう さようなら/木村槿〉いつまで君は赤信号なの?とか言われそう。〈お祈りをされる私も煌々と闇を切り裂く電車の一部/花浜紫檀〉脱力、表面張力を失い電車と一体化した就活生。篠弘選〈スター…

中日歌壇2021年12月19日

中日歌壇 島田修三選第一席〈願えどもタイムリープはできなくて二度と会えない祖母のすき焼き/伊藤すみ子〉四日市の新星ついに一席、どんな味のすき焼きだろうか。甘いのだろうか。〈そこはかとやわらかそうな印象で馬の骨とはひとを指すなり/漕戸もり〉「…

鶴舞公園と短歌

名古屋市の鶴舞(つるま)公園は名古屋市昭和区鶴舞一丁目にあり、明治四十二年に名古屋で最初に整備された公園*1だ。小酒井不木の「名古屋スケツチ」には なほ又名古屋市民に近頃追々喜ばれ出した鶴舞公園はスケツチの種にならぬことはないけれど、公園など…

柴田葵『母の愛、僕のラブ』書肆侃侃房

〈そとは雨 駅の泥めく床に立つ白い靴下ウルトラきれい/柴田葵〉ウルトラは広告宣伝の強調のための文句だったのかもしれない。異常なほどの低視線がある。〈紫陽花はふんわり国家その下にオロナミンC遺棄されていて/柴田葵〉オロナミンCに実存感が出る。…

毎日歌壇2021年12月14日

米川千嘉子選〈高校野球応援隊の母たちは黒髪なびかせ姉さんのよう/角田勇〉母たちがねえさんたちのように若々しく見えた。加藤治郎選〈スーパーは更地になってスーパーで買ったヘアピンも消えてしまった/福島さわ香〉春日井市の更地短歌、中日歌壇にも12…

中日歌壇朝日歌壇2021年12月12日

中日歌壇 島田修三選第一席〈子の口に子供は消えて「永久」という名の大人がいつしか揃う/山崎美帆〉謎掛けのような歌だが評のように歯のことだろう。ちなみに私にはまだ子供がいる。第三席〈左手に見えてきました銀杏を独り占めする人が祖父です/伊藤すみ…

毎日歌壇2021年12月6日

伊藤一彦選〈尊敬を出来ない人に恋をしてどんどんわたし年老いてゆく/大石聡美〉老練になるともいう。米川千嘉子選〈真実を暴くみたいに純白の鉄砲百合の蕾がひらく/住吉和歌子〉百合を見るとこの歌を思うだろう。加藤治郎選〈USB端子がうまく挿さらない…

中日歌壇朝日歌壇2021年12月5日

中日歌壇 島田修三選第三席〈デジタルとふ鎧を来たるモーツァルト死語となりゆく“摩り切れるほど聴く”/上竹秀幸〉思うのはレコードかカセットテープか。〈巻貝はコクトーの耳砂浜に少し埋もれで秋の声聴く/滝上裕幸〉評にコクトーの詩の一節。光景が鮮やか…

鷲谷七菜子「花寂び」『現代俳句体系第十五巻』角川書店

〈寒林の奥にありたる西の空/鷲谷七菜子〉西は仏教的な西方浄土だろう、そこへ辿り着くには寒林をぬけるしかない。明暗の対照がある。〈流し雛に水どこまでもうす明り/鷲谷七菜子〉鮮烈な「うす明り」の表現。〈孕み鹿のうなづき寄るも重まぶた/鷲谷七菜…

渡辺松男『雨る』書肆侃侃房

〈病棟に孤独の落ちてゐた朝はいちまいの楓のやうに拾ひぬ/渡辺松男〉孤独→楓の転換が鮮やか。〈生は死のへうめんであるあかゆさにけふ青年は遠泳したり/渡辺松男〉遠泳しているかのような息継ぎのような生として捉えた。〈こゑのうらこゑのおもてとひるが…

江戸雪『昼の夢の終わり』書肆侃侃房

〈白雲がとてもまぶしい春の日にあなたと椅子を組み立ててゆく/江戸雪〉組み立てるのはなんでもいいけれど、椅子なのがいい。居場所ができるから。〈ストライプの日傘をさして川へゆくときどき風が胸をぬけつつ/江戸雪〉大阪の運河と少し日の強すぎる町並…

渡辺松男『雨る』書肆侃侃房

〈癌のなかにゐずまひ正してきみはありゐずまひはかなし杏子のかをり/渡辺松男〉医師は杏林ともいう。最後の「杏子のかをり」の調べにクラっと来る。〈死後の永さをおもひはじめてゐるわれはまいにち桜はらはらとちる/渡辺松男〉数十億年の孤独に。〈黒煙…

毎日歌壇2021年11月29日

篠弘選〈面接に五人の子をもつ女採りき日々行列のできる食堂/鈴木圭子〉女にひととルビ、もりもり食べたくなる食堂だ。伊藤一彦選〈風船が部屋の真ん中漂って答えが出ない私に似てる/村山仁美〉映画の気球クラブみたいな、夢いっぱいで不安で情景。〈街角…

中日歌壇朝日歌壇2021年11月28日

中日歌壇 島田修三選第一席〈モノクロの家に突然色が付く子の恋人の花のスカート/二ツ木美智子〉結婚とかではなく、若い恋人なのだと思う。〈深みゆく秋のあしたの合はせ鏡私の知らない私を映す/冬森すはん〉「これは誰?」とまでは行かなくても変わりゆく…

渡辺松男『雨る』書肆侃侃房

週刊金曜日の金曜俳句に〈短調の隣より漏る室の花/以太〉が載っていた日、『雨る』のⅠを読む。〈ゆふかげはわが身を透かし地にあれば枯蟷螂にすぎぬたましひ/渡辺松男〉枯蟷螂に自分を仮託する、その自分、ことわが身は夕影に透けているという。危うい自己…

毎日歌壇2021年11月22日

加藤治郎選〈みかん箱がちょこんと乗ってる室外機長くて楽しい冬のはじまり/おでかけサキ〉冬支度だろう。どこのみかんか気になるのは浜松市民だから。〈過去からの欠片が集う蚤の市 モザイク壁画のレーニンのそば/人子一人〉ロシアの景が珍しい。篠弘選〈…

中日歌壇朝日歌壇2021年11月21日

中日歌壇 島田修三選第一席〈ひとところ川面が光る秋の午後さびしき者はここへ来よとぞ/三井久美〉川面の光を声と読む。第二席〈みずからを鼓舞して生きんSLよ汗敢えて乗務の若き日ありき/村松敏夫〉浜松市より、天竜浜名湖鉄道かなと思う。〈木に登る朝…

毎日歌壇2021年11月16日

米川千嘉子選〈ファブリーズせつせと噴霧し禊する平成生まれのあつけらかーん/花嶋八重子〉あつけらかーんが脳に残る。〈つむじ風になればよかった囚われて埋められるならビルのすき間に/横田博行〉なりたいもの、埋められる場所がおもしろい。人間でなけ…

中日歌壇2021年11月14日

島田修三選第一席〈小春日を「老婦人の夏」と呼ぶ国にアンゲラ・メルケル凜凜と生きたり/山守美紀〉ドイツ語を勉強したくなる。第二席〈風やみてためらひのなき書き順のやうに来たりぬけふの団円/冬森すはん〉硬筆ではなく毛筆。〈音だけをたよりに捜さん…

渡辺松男『寒気氾濫』書肆侃侃房

〈約束のことごとく葉を落とし終え樹は重心を地下に還せり/渡辺松男〉落葉で樹の重心が変わるという発想が哀しくも冬めく。〈アリョーシャよ 黙って突っ立っていると万の戦ぎの樹に劣るのだ/渡辺松男〉人が木より勝るとしたら話し動くがゆえに。〈捨てられ…

中日歌壇2021年11月7日

島田修三選第二席〈投獄のジャーナリスト二百人超黒を黒とは言えない世界/滝上裕幸〉自然状態か国家状態か。〈抑え込み絞めて固めて十文字やっと縛ったダンボールだが/柴田きみ子〉ボワっと弾けた、のだろう。〈くい込みて抜けぬ包丁人質に南瓜野郎を湯浴…