以太以外

空の色尽きて一月一日に/以太

対中いずみ『蘆花』ふらんす堂

〈門弟の一人に大き螢かな/対中いずみ〉誰でも弟子をとる覚悟とも。〈ぶらんこの鎖ごと抱きしめられて/対中いずみ〉痛いくらいに。〈汗の子の水槽に手をはりつけて/対中いずみ〉ピタッという音が聴こえそう。〈虹もまたこの波音が聴きたくて/対中いずみ…

所以261

しかし地理的な位置にかかわらず、一九九〇年代における社会的なものへの芸術の指向性――その顕著な特徴は、芸術の物的対象、アーティスト、そして鑑賞者の間に横たわる旧来の関係を打開しようという、共有された一連の欲求である。(クレア・ビショップ、大…

片山由美子『水柿』ふらんす堂

〈ポケットの中の銀貨の凍りつく/片山由美子〉布に覆われた、皮膚に近い、凍らないはずの銀貨も凍る、それほどの寒さということ。〈城濠を埋めつくしたる荻の声/片山由美子〉こういう句にときどきハッとさせられる。〈無花果に雨のにほひの残りをり/片山…

板倉ケンタ『一花一虫』ふらんす堂

〈臘梅を悪い薬のやうに嗅ぐ/板倉ケンタ〉顔をしかめたりして。〈はだれ野やあれはバブルの頃の文字/板倉ケンタ〉甘愁の句、雪舞う郊外、遠いラブホテルの景だろう。〈七人が水着に変はる昼の樹下/板倉ケンタ〉下に水着を着ていたのかな。〈咲かされてゐ…

所以260

Arkeofili、考古学マニアのサイト(トルコ語) Komün、トルコ政府からブロックされている革命サイト(トルコ語) 創作や芸術を商売にしている人はそれをやり続けないといけないけれど、商売ではなく趣味でやっている人はいつでもやめられる。だから趣味でや…

所以259

海南郡の長鼓峰古墳(5〜6世紀)、筑紫の豪族を埋葬? 石室は日本の九州の外海岸と有明海一帯で5~6世紀に造成された倭人貴族の石室墓と、構造はもちろん墓の内部への入口をふさぐ前に行われた祭祀の跡までほとんど同じだった。(朝鮮半島最大の古代の墓、開…

所以258

Alevi Gazetesi、アレヴィー派の新聞(トルコ語) Mezopotamya Ajansı、クルド人によるメソポタミア通信社(トルコ語) もしもクマの攻撃によって体の一部が取れてしまったら、病院に持ってきてほしいという。ポリ袋に入れたり、タオルで包んだりしてもいい…

所以257

遠江将棋名士鑑 AL KKA KI、碁盤を使ったおはじきのようなゲーム Εποχή / Epochi, Trabzon Gazetesi, 1918年から1921年にかけてトラブゾンで発行されたギリシャ語新聞「エポキ」。トルコ語訳 Bu çalışma yalnızca kaç kişi öldü, ne kadar yer yıkıldı gibi …

所以256

市民にローンを組ませる、借金をさせることは治安維持のひとつの手法、つまりなにかを所有したい欲望をかきたてる。 雨傘革命の初期は警察官が群衆へ帽子を脱ぐ場面もあった。それがだんだん暴力をふるうようになり(「乱世備忘」)、やがてなりふり構わず発…

市民的不服従のために必要な装備

デモ活動やバリケード封鎖や一揆に参加する群衆が持っていると便利だと思う用具を想像で列挙した。

所以255

朝鮮・満洲の銀行をほぼすべて設計した中村與資平 和理非と勇武 詩のことばがよりプライベートなものとなり、個人のうちにある心の表現に向かったことからわかるのは、文学の言葉が共同体と個人との結束を高めるより、個人と個人とをつなぐことに力点を移し…

所以254

令和7年度『収穫祭』第1位作品「グーテンベルクの肺活量」 天竺老人の浮世絵サイト MUNA-POCKET COFFEEHOUSE ムナポケ。静岡県浜松市で演劇公演等を中心に活動しているクリエイティブチームです。(MUNA-POCKET COFFEEHOUSE について) CREEVO Suno.ai 個人…

所以253

路上ライブと途上ライブ、路上生活者と途上生活者 世界文学≒翻訳文学 Aujourd’hui M’ma est encore vivante. (Kamel Daoud, "Meursault contre-enquête") jeune afrique パリ郊外のHLM. 低家賃住宅 Habitation à loyer modéréとビレッジハウス・遠州浜団地・…

所以252

スピノザ主義者の哲学探究 日本軽佻派・大岡淳 双義仄用・複義偏用、愛憎は憎、得失は失、利害は害、緩急は急、成敗は敗、同異は異、禍福は福、老幼は老、車馬は車、 古人之辞、寛緩不迫故也 腰蓑の逆立つ遠州鬼踊/対馬康子(『百人』ふらんす堂) 虫の音の…

対馬康子『百人』ふらんす堂

ブログタイトルの百人を変換しようとして百年になって驚く。そういえば金子兜太『百年』という句集があった。〈ホッチキス滝はどこまで綴じられる/対馬康子〉滝を綴じるという感覚はいままでなかったけので新しい、滝はこちらとあちらを隔てる裂け目のよう…

所以251

原始感覚美術祭 ペトロ・カスイ岐部神父 | カトリック東京大司教区 文語の「けり」はただの過去の助動詞ではなく回想・想起の助動詞 訂閱《聯合文學》實體雜誌 unitas 私性論でも、〈われ〉でも〈なんじ〉でも〈われわれ〉でもない、読者をも介する作中主体…

所以250

季刊《秋刀魚》 ドイツ極右政党「AfD」の候補者最大6人が、西部の広大な州ノルトライン=ヴェストファーレン州での地方選挙を前に数週間のうちに死亡したとBBCが報じた。(ドイツの極右政党「AfD」、地方選挙を前に候補者の死が相次ぐ) SNSで罵りあっている…

所以249

(世間とは個人じゃないか)(太宰治『人間失格』) 文芸県としての岐阜県 たびねする小夜の中山さよ中に鹿ぞ鳴くなる妻や恋しき/橘為仲 弓はりの月のやどれる底をみてなるかの海にあまのいるらん/平祐挙 受領歌人/受領層歌人 安全とされたる街の瓦礫など…

なつはづき『人魚のころ』朔出版

〈切手貼るさっき小鳥がいた場所に/なつはづき〉小鳥来るではなく小鳥去る。その場所はどこへでも通じる場所だ。〈啓蟄やどんな森にもなる図書館/なつはづき〉啓蟄という生き物の芽吹きに、図書館も自然に還るのだ。〈嚔して守衛は顔を取り戻す/なつはづ…

所以248

oi-quot mataji by mataji 国家記銘院 Instytut Pamięci Narodowej ほととぎす銚子は国のとっぱずれ/古帳庵 〈スプーンが七本あります/藤原蛍〉(『生活もままならない』)きっと小人を七匹飼っている。 〈新しい机になってから青痣が増えた/藤原蛍〉(『…

所以247

李雨濃 白賁の冬 つまりHSPやCGPの延長線上に、わび・さびはあるのだ。(小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書) 〈夢とうつつの区別がつかない〉というのが、無数のフィクションを生んだ京都という都の特徴である。(小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書) …

所以246

日本の表現者は普遍的・一般的・全体的な世界への視座を持つことはなく、自分が所属する閉鎖的で特殊な世界にいつもすでに「組み込まれて」いる。(小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書) 有何不平、有何旦夕之危、有何逼迫 所向無敵 男性と女性の二元論では…

所以245

「道具」と「道具ではないもの」を分けて世界をふたつに切断することが、道具的文明の行為である。(小倉紀蔵『日本群島文明史』ちくま新書) 大文明は、本来は多重主体である人間を、他者と断絶した個人として改造してしまったので、今度は逆に他者との通路を…

所以244

ステテコはいた猫 短歌時評208回「短歌の破片」詩客 瀬下 翔太 / Shota Seshimo 批評はプロレス なお、総面積は日本の内陸県のうち岐阜県、長野県、山梨県、群馬県、栃木県を併せた面積(約4万1,458km2)に相当する。(スイス) ↑すごい良い解説 旅の文芸ムッ…

所以243

遠州地方では、お葬式や法事の引出物に「お平パン(おひらぱん)」という堅パンを出す風習があります。このパンは小判のような形をしたカステラを固くしたようなパンです。 (お平パン) ↑飛竜頭(ヒリューズ)≒がんもどきの代用としての堅パン 引き金を引く…

所以242

猶覆卻万方陳乎前、而不得入其舎。(荘子) ↑舎が心? フェミニズムという社会実験は失敗した。多くの犠牲をはらい、多くの人生を破壊したけれど、実験に挑戦した人々の勇気を讃える。 神よ/農業が愛されますよう(山尾三省「夕日」『火を焚きなさい』野草社) …

望月哲土『望』

表紙がテカりすぎて写真を撮ると自撮りになる句集。百句収録されているが、すべてに詞書というより解説がついている。〈地道という地図にない道梅ひらく/望月哲土〉「地図にない道」という表現がいい。初春の期待感もある。〈靴下の左右が不明春の風邪/望…

滝浪武『羅針盤』牧羊舎

故・滝浪武さんの句集が届いた。〈さくらから手と足がでる異邦人/滝浪武〉省略が効いて笑える景になった。〈急流が眼下にありて春のピアノ/滝浪武〉ただならぬ景、ただならぬ音が奏でられそう。〈夏帽の少年馬の背にたてがみ/滝浪武〉生前「少年」という…

所以241

及其至於王所、與王同筺牀、食芻豢、而後悔其泣也。(荘子、斉物論) ↑驪姫 「火星に移民しよう、と言っているおめでたい人たちというのは、宇宙空間の過酷さを理解していない。また、宇宙との距離感を想像する能力を持っていない人たちの集まりだ」(「人は…

所以240

「きみが世界の構造を書くのなら/わたしは個の構造を書いて/いつかそれを一つに合わせてみよう」(中尾太一『ルート29、解放』書肆子午線) 類例のない文法と置き去りの言語がわたしの原型を映写していた(中尾太一「馴」『ルート29、解放』書肆子午線) …