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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

中日歌壇中日俳壇2021年1月31日

島田修三選第一席〈新しき齢となればそのページ改めて読む『臨終図巻』/松本秀子〉評では山田風太郎『人間臨終図巻』とのこと。第二席〈鍬を振る媼その声甦りつつ田畑は更地へ均されていく/郷幸子〉不耕起栽培が叫ばれる今だが、かつては人の手によって田…

春日井建「未青年」『現代短歌全集第十四巻』筑摩書房

海際のスナックがカフェになっていた日、「未青年」を読む。〈空の美貌を怖れて泣きし幼児期より泡立つ声のしたたるわたし/春日井建〉美貌は晴れか曇りか。〈啞蟬が砂にしびれて死ぬ夕べ告げ得ぬ愛にくちびる渇く/春日井建〉「砂にしびれて」の詩的ふるえ…

壬生キヨム『作中人物月へ行く』白昼社

入野町にできたじゃじゃの私設図書館に入ったという『作中人物月へ行く』を読んだ。〈ああこれは昔、郵便飛行士を殺した雨と同じ甘さだ/壬生キヨム〉サンテグジュペリの死を思う。〈大切な日のため持っておくんだよいつも避けてた薄荷キャンディ/壬生キヨ…

中日歌壇中日俳壇2021年1月24日

ちなみに中日歌壇の賞は「天・第一席:図書カード二千円分」「地・第二席:図書カー千円分」「人・第三席:図書カード五百円分」となっている。中日俳壇も同じだろう。島田修三選第一席〈天と地に垂直平行くり返し空間区切る足場組む人/稲熊明美〉最近塗装…

「炎晝」『山口誓子句集』角川書店

〈手袋の十本の指を深く組めり/山口誓子〉怒りとして読めないのは手袋の手触りがあるからだ。〈秋の雲つめたき午の牛乳をのむ/山口誓子〉牛乳はちち、白さと濃さとが強調されている。〈メスを煮て戸の玻璃くもる冬となりぬ/山口誓子〉灰色の暗い寒さがあ…

中日歌壇中日俳壇2021年1月17日

島田修三選第三席〈図書館のレストラン暮れに閉ぢるとふ気に入りゐたるにこれも訃報ぞ/大谷登美子〉生活習慣が変わること、それも訃報なのだ。〈あんなにも親密だった人の名を半日かけて想い出す老い/水野千代子〉半日かける集中力がある。小島ゆかり選〈…

吉岡生夫『草食獣第四篇』和泉書院

新年俳句大会で〈ひいらぎの花列島に雲ひとつ/以太〉が会長入選句となったと知った日、『草食獣第四篇』を読む。〈つきあがりし餅の熱さをもろばこに移すつかのま臓器おもひぬ/吉岡生夫〉外科手術で切り落とされた臓器。〈花火より帰れるひとかざわめきの…

中日歌壇中日俳壇2021年1月10日

島田修三選第一席〈歪むとふ知恵を持たざる無垢のままメタセコイアの何千万年/前川泰信〉遺伝を知恵と表現したおもしろさ。古種への敬意がある。〈たどたどしき子の棒針に生き生きと余り毛糸の冬が始まる/山崎美帆〉「余り毛糸」と思ったけれどこれは「余…

中島斌雄「樹氷群」『現代俳句体系』角川書店

久々の休み、中島斌雄を学ぼうと思う。〈ニコライに寒月かくれ坂となる/中島斌雄〉御茶ノ水のニコライ堂、月が動いたのではなく作中主体が坂を動き月が隠れた。〈吹雪きつゝ歩廊の時計みな灯る/中島斌雄〉人工の灯が吹雪を照らす。〈手に触れしポストの口…

土岐友浩『僕は行くよ』青磁社

ただひたすらに眠い日、『僕は行くよ』を読む。〈図書館はあまりなじみのない場所で窓から見えるまひるまの月/土岐友浩〉異郷感の具象としての「まひるまの月」がややSFめいて光る。〈鉛筆の芯をするどく尖らせて「無」と書いていた西田幾多郎/土岐友浩〉…