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以太以外

国は夜ずっと流れているプール 以太

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

中日歌壇2021年9月26日

島田修三選第一席〈「八十歳にもう手が届く」とつぶやけば「長い手だね」と娘にさすられる/塩谷美穂子〉八十歳にはちじゅうとルビ。「手が届く」の意味を二重にとるおもしろさ。作中主体の立ち位置を考えさせられる。〈鍵盤の黒が少ない朝礼の横一列のマス…

中日歌壇朝日歌壇2021年9月19日

中日歌壇 島田修三選第三席〈亀の子の一二三四五、十二十、五十六十海へ海へと/中山いつき〉短歌は歌なのだと改めて思う。〈スマホ鳴り「十階ですよ見えますか」手を振るだけの面会終わる/安形順一〉発話は患者の方だろうか。〈助詞の「に」はforにto足しa…

塩見恵介『隣の駅が見える駅』朔出版

未明、『隣の駅が見える駅』を読んだ。〈リポビタンDの一滴昭和の日/塩見恵介〉ヒロポンにせよリポビタンDにせよ、昭和はそんなまがいものじみた薬物で動いていた。〈ゴールデンウィークをアンモナイトする/塩見恵介〉巣ごもりの日々である。〈のりたま…

中日歌壇朝日歌壇2021年9月12日

中日歌壇 島田修三選〈さながらに地獄を脱する蜘蛛の糸アフガニスタンを飛行機は発つ/小山肇美〉芥川龍之介の蜘蛛の糸であろう。〈女性から男を口説いてくれたならどんなに楽かと若き日思いぬ/坂部哲之〉女性の方が会話は得意だから。〈夫と我微妙に話しず…

吉田隼人『忘却のための試論』書肆侃侃房

目が覚めてしまった午前三時に『忘却のための試論』を読む。〈旋回をへて墜落にいたるまで形而上学たりし猛禽/吉田隼人〉決して幾何学ではない、まず見えもしない。〈枯野とはすなはち花野 そこでする焚火はすべて火葬とおもふ/吉田隼人〉生と死は表裏であ…

中日歌壇朝日歌壇2021年9月5日

中日歌壇 島田修三選第一席〈四本のささがき牛蒡つくる間にいらだち忘る夕立も上がり/祖父江寿枝〉日常の作業のなかで感情を整理していく。許すべき点も出たのかもしれない。〈いくつもの入道雲が重なりてスコアボードの背景となる/口野光康〉入道雲は選手…