2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧
Ⅰ 〈海胆のゐる部屋に時計が鳴る仕掛/鴇田智哉〉は〈階段が無くて海鼠の日暮かな/橋閒石〉を思う、時間の流れと海洋生物と日だまりのマッハ哲学における感覚的関数みたいな。〈分銅を置きかへて日の深まりぬ/鴇田智哉〉これも安定した感覚のかたまりであ…
中日新聞一面にある平和の俳句より〈悲しむな顔を上げよと海の声/鈴木昭子〉。島田修三選第一席〈中学生の僕に出会ったような朝 黄色い花より春は始まる/坂神誠〉中学生のときの匂いを思い出す黄色い花かも。第三席〈濃みどりの音符に春を謳ひゐるごとき〈…
〈女子だけが集められた日パラシュート部隊のように膝を抱えて/飯田有子〉ただ落下するために。〈足首まで月星シューズに包まれていさえすればいさえすればね/飯田有子〉それさえあればだいじょうぶな気がするムーンスターの靴。〈オーバーオールのほかな…
島田修三選第一席〈サドルよりゐさらひ上げてペダル漕ぐ少女ひちちかにわれを追ひ越す/高井佾子〉少女は十二単をまとっていてもおかしくない。第三席〈青空に僅かに撓む電線の渡る地の果て遠き旅路よ/植手芳江〉曠野を旅する感がある。〈ローンなどとんで…
第4回浜松「私の詩」コンクール一般の部において「薬局にある象の遊具」という詩で浜松市長賞をいただいた。前回に引き続き2回連続の浜松市長賞である。また入賞作を読む。 小学生の部 浜松市長賞の佐野未歩「大きい小さい」は思弁的である。人間と地球と宇…
島田修三選第一席〈ブラバンのロングトーンが溶けてゆぬ 夕暮れ 校庭 三角牛乳/鈴木真砂美〉「ロングトーン」の音の長さと懐古の余韻の長さとが字あきで表現される。第二席〈野良猫がひょいと垣根を越えて来るひょいがほしいな猫と目が合う/森真佐子〉「ひ…
〈いつまでも語彙のやさしい妹が犬の写真を送ってくれる/吉田恭大〉やさしい語彙のひとつとして犬の写真をもらう。〈もうじきに朝だここから手の届く煙草と飴の箱が似ている/吉田恭大〉徹夜明けか早朝覚醒のボンヤリさがわかる。どちらも口寂しさを紛らわ…
中日新聞しずおかの一面に現磐田署長で、東日本大震災発生直後に静岡県警機動隊大隊長だった方の短歌が載っている。〈収容の何も語らぬ亡骸に 水筒の水そっと注ぐ/鈴木宏哉〉。歌壇は浜松市のふたりが第一席。島田修三選第二席〈E線をピチカートする指のご…
〈秋の日のミルクスタンドに空瓶のひかりを立てて父みな帰る/佐藤弓生〉誰かの父であろうサラリーマンたちが牛乳を飲み干してどこかへ帰る。ミルクの語感と父のギャップが面白い。〈神さまの貌は知らねどオレンジを部屋いっぱいにころがしておく/佐藤弓生…