2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧
自由律俳句を楽しむ会第一回に〈ウーバーイーツで買えた春風/以太〉が載った日、『死ぬほど好きだから死なねーよ』を読む。〈父危篤の報受けし宵缶ビール一本分の速度違反を/石井僚一〉飲酒運転ではなく速度違反というズラシの面白さ。〈遺影にて初めて父…
島田修三選第三席〈花を見てをれば腹など立たぬと言ふ友は何見てゐたのだろうか/鈴木昌宏〉馬に人参よろしく花を提げていれば腹も立たないのかも。〈催花雨となりし夜来の雨上がり若き農婦のパステルカラー/北村保〉田園の色彩が豊か。小島ゆかり選第一席…
雨のなか硝子に囲まれたストリートピアノを観ながら『メタリック』を読む。〈ママレモン香る朝焼け性別は柑橘類としておく いまは/小佐野彈〉とある未知数としての柑橘類。〈セックスに似てゐるけれどセックスぢやないさ僕らのこんな行為は/小佐野彈〉繁殖…
島田修三選〈滝田ゆう描きし日暮れの路地を行くふくら雀の如き老人/成田信行〉滝田ゆう? と思ったけど絵柄を見て思い出す。かわいらしい老人なのだろう。〈俺だよとカレーショップのネパール人マスク外せる桑名駅前/三井一夫〉桑名駅は懐かしい。乗り換え…
肩がこる日、『壱』を読む。〈焼夷弾降りしあたりを都鳥/坊城俊樹〉隅田川あたりの業平の物語と戦中とが交錯する。〈出征し負傷し此処に暦売る/坊城俊樹〉靖國神社のカレンダーだろう。糊口をしのぐために暦売りをしなければならない。〈零戦といふ夏空の…
『僕は行くよ』に〈後頭部をつめたい窓にあずければ電車の音が電車をはこぶ/土岐友浩〉という短歌が収められている。この歌で後頭部の持ち主は目をつむっている。そして骨伝導で「電車の音」を聴いている。もちろん電車をはこぶのは電気による駆動であるけ…
島田修三選〈ゆつくりと近づいてくる春の船眩しきものを山積みにして/後藤進〉スエズ運河封鎖以後だと海運のたいせつさに気づく。〈裏庭といふ言の葉の淋しさよ裏にも裏の春は来ている/稲熊明美〉小さな世界にも春がある。〈月光に浮かべる線路終点は亡き…
霏霏Ⅱはひひnextと読む、熊本県で創刊した季刊の俳誌。〈デジタルが雪を神話に変える村/中山宙虫〉動画に撮るときデジタルという仕組みは擬神の役割を果たす。〈柊ほろほろ けものの体温で/星永文夫〉柊の小さな白と獣の吐く息の白さの対比が美しい。〈疫…
島田修三選第三席〈突風に捲かれ固まる園児らを花束のごと教師抱きしめる/神戸隆三〉色とりどりの帽子をかぶった園児たちだろう。〈この店のオススメ料理尋ねると「旨いもんはない」と言うなり店主/稲垣千草〉商売っ気のなさがおもしろい。小島ゆかり選第…