2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧
浜松駅のバスターミナルを見下ろしながら『展開図』を読む。〈ブレザーの紺に吸われてゆく雪がきみの一部のようだった頃/小島なお〉ブレザーに吸われるのではなくブレザーの紺に吸われるという甘愁。〈頭すこし右に傾く癖いつも眠気は袋状に来るもの/小島…
静岡市葵区鷹匠のひばりブックスで買った『符籙』を読む。〈一畳のポスターに画鋲冬はじまる/橋本直〉ポスターの重みを支える画鋲の冷たさを思う。〈聖樹いつも星に吸はれてゐる形/橋本直〉ものの捉え方と周囲との関わりの作り方が巧みだと思う。星はどち…
台風が逸れた日、『関大短歌第四号』を読む。〈パセリふるだけで綺麗に見えるでしょう愛してもらうことに決めたの/渡つぐみ〉安易な綺麗さとその安易さで手にする愛、サイゼリヤのような生き方。〈こんばんもシャワーヘッドから溢れる数多の天使に身を濡ら…
竜ヶ岩洞から帰った夕刻、『岡大短歌8号』を読む。〈ポタージュの湯気を見つめて《忘れっぽい天使》のように微笑んでいる/深谷あおい〉《忘れっぽい天使》はパウル・クレーの絵だろう。絵を知らなくても「忘れっぽい」はそれだけで愛らしい。〈かなしみを…
三ヶ日で朝の浜名湖を見ながら『九大短歌第十一号』を読む。〈神聖な涼める我が家に入るには消毒液で手水するべし/長尾義明〉「神聖な」の諧謔が効いている。〈今日ついに一位になった星占いラッキーパーソン『元カレ・元カノ』/山下拓真〉最後の七音にど…
朝日新聞に第49回全国短歌大会の記事が出ていた日、「O」と「斉唱」部分を読む。〈街上に白墨の矢がのこりたりいかなる意志を伝へむとせし/岡井隆〉白墨は、黒板というより木材やコンクリートに書かれた工事用の指示だろう。本来はその指示の受け手ではない…
楽しい日、『憂春』を読む。〈遠山はいちじく色に日暮れつつそこに谺す川魚のこゑ/小島ゆかり〉川魚の声が谺するのが聴こえるほど色濃い山行の思い出がある。〈下り行くわれの後ろにしばしばも鉄扉は閉ぢぬ夕闇の山/小島ゆかり〉夜という鉄扉に閉ざされた…