2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧
枇杷の種を埋めた日、「紫薇」部分を読む。〈木の実独楽直立せねばうなされて/澁谷道〉均衡を失いはじめた木の実独楽を「うなされて」という把握の見事さ。〈肩先を秋の岬にして男/澁谷道〉故郷すべてが身体であるかのような男について。〈ほのぐらく茶漬…
第三十一回伊藤園お~いお茶新俳句大賞の二次審査通過のお知らせが届いた日、「縷紅集」部分を読む。〈鏡拭けば廃村という春景色/澁谷道〉鏡の曇りを拭うと廃村の春の景色が映っていた。人が絶え自然の繁茂する、やわらかい景なのだろう。〈廃屋曾て雛の具…
折ゝに伊吹を見てや冬籠 芭蕉 「見る」と「籠る」、つまり自分の視界を確保しながら他者の視線から身を守るような振舞い癖、この二つの相矛盾するしぐさを同時に充たす生活空間を人は好むという理論の基本を、わたしは英国ハル大学の地理学者アプルトン氏に…
浜松市立図書館臨時休業の最終日、山田耕司『不純』左右社を読む。〈ペンギンは受話器にあらず半夏生/山田耕司〉黒と白の詩なので、受話器は黒電話となる。もちろんペンギンは受話器でもいい。〈いきんでも羽根は出ぬなり潮干狩/山田耕司〉海と空とをつな…
特別定額給付金の申請書を投函した日、「桜騒」部分を読む。〈ぬぎすてて春着へ移す夜の重心/澁谷道〉身体の重みをふと無くしたかのように脱ぐ。これは脱ぎ方についての句であり裸身が青白い。〈鮭とボサノバ喉いっぱいの夕映え/澁谷道〉鮭という魚類のも…
第四回円錐新鋭作品賞選考座談会にて拙作「動物園前」の〈鯛焼の影より鯛焼は剥がれ/以太〉〈遅刻してゐる外套を出られない/以太〉〈影淡きアイスクリームつみあがる/以太〉などが言及されたと知った日、「藤」部分を読む。〈グラスみな水の粒著て夏至時…
軸の文音句会で〈湯切りする窓をぬぐえば柳かな/以太〉と〈道の尽きるときの音は竹の秋/以太〉が編集部のふたりの特選を、〈そらいろの帽子目深に糸柳/以太〉が同人会長選をいただいた日、「嬰」部分を読む。〈ヒヤシンス鏡の向うでも匂う/澁谷道〉虚像…
見田宗介の『社会学入門』岩波書店に小林一茶の句として〈手向くるやむしりたがりし赤い花〉が紹介されている。この句は、顕在態と潜在態を説明する題材として、柳田国男の『明治大正史 世相篇』から見田が引用した。確かに『明治大正史 世相篇』の第一章「…