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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

所以42

  • ジェイムソン*1によれば、テクストは、他の仕方ではアクセスできないような歴史性へ私たちを導く、主要な媒介項である。その歴史性は、スピノザ的な意味での不在原因として機能している。その点においてテクストは、私たちの「政治的無意識」を理解するための資源なのであり、この「政治的無意識」が解釈作業の対象とならなければならない。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • 作家の位置は、彼らが保持する特定の象徴資本〔capital symbolique〕の量や構成、すなわち彼らが作家として享受する承認の度合いや種類との関係で定まる。(同業者や批評家による)象徴的承認は、必ずしも世俗的成功(売り上げや制度的聖別化)をともなうものではないし、逆もまたしかりである。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • 支配者dominantsと従属者dominés、アカデミー・フランセーズ会員と文学的ボヘミアン、地位を確立した者とアウトサイダー、ベテランと新参者の対立、新たな参入者たちの異義申し立て活動とジャンルの区分の問い直し。
  • 文学場の特徴のひとつは、流通(雑誌、出版社)および聖別化の諸審級の多元性であり、これは専門職的性格の弱さと表裏の関係にある。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • 審級の多様性。大学や学問期間・社交の場・出版社*2による流通、聖別化の審級としての文学賞*3、作家協会*4、文学集団や文学流派*5など。
  • 文学作家の専門職的性格の弱さ、副業が多い。
  • ブルデューの理論的視点に立てば、それぞれの芸術場や文学場や知識人の場は、何が語られる(描かれる)に値し、いかなる語り方(描き方)がより正統であるのかについての共通の信念に支えられている。この基本的な信念を転覆させる行為が「象徴革命(révolution symbolique)」である。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • しかしながら、預言者的な人物の周辺に集まったセクトのようなものである限り、前衛集団も多くの場合、手順のルーティン化、メッセージの希薄化、そのメンバーの制度的固定化などから引き起こされる社会的老化を免れることができない。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • →レミ・ポントンによるルコント・ド・リールらパルナス派に関する研究。前衛集団もやがて社会的老化する。
  • 文学フェスティヴァルは、新人作家たちには承認と正統化の機会を与え、すでに地位を得ている作家たちにとっては、その名声を保ち、象徴資本を維持し強化する場となっている。(ジゼル・サピロ、鈴木智之・松下優一訳『文学社会学とはなにか』)
  • samurajo estas ununura revolucia klaso, kiu venkis en japanujo.
  • lernu latine kaj skribu esperante.
  • われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。(日本国憲法前文
  • 日本国憲法前文には『菊と刀』で描かれた国際社会で名誉ある地位=応分の場を占めたいと願う大日本帝国のころから一貫した日本人の希求が書かれている。
  • 日本国憲法前文は1945年8月15日を境とする日本人の軍国主義から民主主義者への変節を変節ではなく応分の場への一貫した態度であったと追認している。
  • 統一された不可逆的時間とは、世界市場の時間であり、その必然的帰結として世界的スペクタクルの時間となる。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫
  • 世界は、既に一つの時間の夢を所有している。今、それを現実に生きるための意識を所有せねばならない。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫
  • 地理的距離を除去するこの社会は、自らの内部で、スペクタクル的分離として距離を取り集める。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫
  • 商品循環の副産物ときて、一つの消費とみなされる人間的循環、すなわち観光が生まれるが、それは結局のところ、本質的に、凡庸化されたものを見に行く余暇である。さまざまな土地を訪れるための経済的整備は、既にそれ自体で、それらの土地の等価性を保証するものである。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫
  • インフラ整備された国での観光(ツーリスム)はどこまでも似たような都市を巡るだけとなる。寺山修司の言うような永山則夫の見た灰色の空はどこにもない。
  • 旅から時間を奪ったのと同じ現代化が、旅から空間の現実性を奪い去ったのである。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫
  • 巨大スーパーマーケットというかイオンモールは「分配工場」と呼んでいい。
  • プロレタリア革命とはこの人間的地理による批判であり、それを通して個人と共同体は、もはや単に自分たちの労働が横領されていることだけではなく、自分たちの全体的な歴史が横領されていることにも応える風景と事件を構築せねばならない。(ギー・ドゥボール、木下誠訳『スペクタクルの社会ちくま学芸文庫

*1:引用者註、アメリカのマルクス主義批評家フレドリック・ジェイムソン『政治的無意識』

*2:大出版社あるいは信頼できる専門出版社の名を本に印字すること

*3:新人賞も

*4:俳人協会歌人協会

*5:俳句や短歌の結社