以太以外

国は夜ずっと流れているプール 以太

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

交差する浜松古本市

松菱跡地での浜松古本市inオンラインクロスロード2022に参加した記録。

所以60

人物に問題があるからその人の俳句や短歌や詩や小説などの文芸作品を掲載すべきではないという意見には賛同できない。たとえ死刑囚であっても。 何らかの権威が価値判断を独占するのではなく、より遠くへ向けて語られるいくつもの声が複合し、落ち着く所へ落…

所以59

スピノザはまず無限を肯定した上でそこからその否定としての有限を考えるのである(神の視点)。だからスピノザの無限には、無際限の場合のような外部が存在しない。(國分功一郎『スピノザ』岩波新書) 十六世紀以降、手稿は出版後に破棄されるのが出版界の…

所以58

スピノザはつまり、哲学体系がどのようにして発生するのかに最大の関心を抱いている。(國分功一郎『スピノザ』岩波新書) 俳句は言語の欠陥を活かす。 俳句は、アラビア語やヘブライ語のように、名詞で修飾した方が良い。形容詞で修飾するよりも。 郵便配達…

岸本尚毅『雲は友』ふらんす堂

平らかに心すべってゆくか。〈ひとところ黒く澄みたる柿の肉/岸本尚毅〉黒く、だけではなく澄んでいる。そこが甘いところでもある。〈はらわたの動くを感じ日向ぼこ/岸本尚毅〉不随意、つまり意識外の臓器が動く。体内で別の意志が働くのを恒星からの光で…

所以57

〈猛勉強表の尾行大あくび/信濃太郎〉山鹿泰治と延島英一の電気工としての猛勉強ぶり。 la originala teksto de Risma Manifesto 宮下玲奈と河北彩花の顔の違いは前者がやわらかくて、後者はとがっている。しかし似ている。 hajbuno estas hajkeca prozo. e…

毎日歌壇毎日俳壇2022年10月24日

西村和子特選一席に〈台風や鼓膜のなかを動く水/以太〉が採られ評もいただいた。片山由美子選〈テーブルの林檎一個の香りかな/小熊寿房〉それだけでもう部屋中香るくらいの。小川軽舟選〈天高し鞄に不合格通知/古川麻美子〉再チャレンジする気まんまん。…

第五回浜松私の詩コンクール

第5回浜松私の詩コンクールで中日新聞社賞をいただいた。10月23日(日)午前は新川モールと松菱跡地で過ごし、午後クリエート浜松4Fの浜松文芸館講座室で催された会に参加した。 小学生と西遠女子学園の生徒さんたちとご年配の方々のなかへ幼児を連れて混ざ…

野村日魚子『百年後嵐のように恋がしたいとあなたは言い実際嵐になったすべてがこわれわたしたちはそれを見た』ナナロク社

あまりにも独特すぎる調べはそれぞれの読み手に自分だけの内在律かもと錯覚させる。〈四番目に来た男の靴が濡れていて雨に飛び降りた人だと思う/野村日魚子〉どこの、何の列だよ。服が濡れていないのは靴を脱いだからか。〈生きてると死んだの間に引く線の…

所以56

エスペラントで国名を作るとき接辞iを使わず容れ物の接辞ujを使い続ける原理主義者を困らせるためだけに、新しい接辞uĵを使うとか面白いな。意味は粗悪の接辞aĉの逆、好ましさの接辞uĵ。 世界のすべての言語は無意識な人工語で、そのうち近代諸國語は半意識…

所以55

上州弁「〜だがな」がとびだした。 詩歌文芸の新人賞は技量を競うものではなく、運比べである。つまり新人賞総体でその運を手中に収めるまで走り続ける体力と根気があるか、つまり業界の役に立つ人物かを新人は試されている。 俳句に限らず詩歌文芸の新人賞…

第70回記念麦全国大会

浜松駅始発の新幹線に乗って東京駅へ赴いた。新宿駅東口のベルクでブレンドコーヒーを飲み、地下鉄を乗り継いで浅草へ向かってから仲見世・浅草寺・浅草神社・花やしき前などを周って牛丼を食べ、13時から浅草ビューホテルでの麦全国大会に徳島の酢橘が並ぶ…

読売歌壇読売俳壇2022年10月17日

タビノス浅草で読む。小池光選〈妻子率て父ひとり待つふるさとへ帰りし頃がしあわせだった/藤川幸雄〉行く場所が決まっているという幸福。〈空色のシャツブラウスを着て行こう安くておいしいお芋を買いに/楠井花乃〉空色と芋の紫の対照がおもしろい。栗木…

所以54

「同志山忠の思い出」(油彩画)望月晴朗、陀田勘助=山本忠平 〈誰彼が鮮人二名と捕へらる――朝の通信、吾は微笑す/後藤健太郎〉アナキスト詩人、栃木監獄より。 「反逆は一つの良心である」――陀田勘助は馴致されない男である。その詩のアナーキーな遠心力…

堀田季何『人類の午後』邑書林

〈エレベーター昇る眞中に蝶浮ける/堀田季何〉重力とか地上の力から解放された存在としての蝶だ。〈紋白蝶重し病者の鼻梁には/堀田季何〉本当にその紋白蝶いますか? と病者へ訊ねてはならない。〈閉館日なれば圖書みな夏蝶に/堀田季何〉読む者が帰ってく…

所以53

岡崎市のおかざき世界子ども美術博物館内親子造形センターでの図画工作教育はすごい。傑出した芸術家が一ダースは育ちそう。 泥書房(京都市中京区新町通六角下る六角町357-4)入室料300円 台湾に行ったら、台北は象山の渣男で食べたい。 馬の油は火傷の跡が…

毎日歌壇毎日俳壇2022年10月10日

伊藤一彦選〈左目は右目の景色を見れないが彼ら一対である凛々しさ/宇井香夏〉それひとつだけでも十分であるけれど一対であることで何かを全うできるものとして両目。そして、他にも。ちなみにこの人は加藤治郎一席にも〈JR千葉駅の南側にある暗い大きな…

所以52

冷笑は何も問題を解決しない。しかし虚構に基づく活動は現実の問題を解決できない。 sateco lacigas min. malsato ne lacigas min. エスペランティストが使う「mdr」「MDR」は(笑)とか草と同じ。 (Internet slang, text messaging) initialism of multe da…

所以51

sub specie aeterni 永遠の相のもとに 六・四五 永遠の相のもとに世界を捉えるとは、世界を全体として――限界づけられた全体として――捉えることにほかならない。限界づけられた全体として世界を感じること、ここに神秘がある。(ウィトゲンシュタイン、野矢茂…

奥村知世『工場』書肆侃侃房

職業詠のひとつである肉体労働者詠は私の配達者詠と重なるところがある。〈先芯が鉄から樹脂へ替えられて安全靴はやや軽くなる/奥村知世〉樹脂と軽さに一抹の不安。〈夏用の作業着の下をたらたらと流れる汗になる水を飲む/奥村知世〉汗を流すための水分と…

所以50

coitus more ferarum そういえば、個物の「個」に当たるラテン語には「パルティクラーリス」(particularis)と「シングラーリス」(singularis)があるが、『エチカ』は「シングラーリス」の方を好んで用いる。それには理由がある。「パルティクラーリス」…

所以49

森鴎外「阿部一族」を読む。『菊と刀』で描かれた応分の場を占めたい日本人の心情劇を読むならこれ。〈遺品あり岩波文庫『阿部一族』/鈴木六林男〉 自由意志のないものも、自由でありうるか。もしありうるとしたら、その「自由」はどのような意味の自由なの…

相子智恵『呼応』左右社

ときどき季語は添え物にも思えてくる。でもその添え感を好ましくも思えてくる。〈工場を抜けて河口や秋の暮/相子智恵〉海際にある工場地帯だろう、広々とした秋の暮が思い浮かぶ。〈地下鉄の風に向かふや卒業す/相子智恵〉地下鉄のやや生ぬるい風が未来だ…