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以太以外

国は夜ずっと流れているプール 以太

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「夜の客人」『田中裕明全句集』ふらんす堂

保育園からの強気の登園自粛要請に驚く日、「夜の客人」部分を読む。〈家々の切れてつづけり浮寝鳥/田中裕明〉街のデフォルメされた景色と距離を違えたところにいる浮寝鳥について。〈一身に心がひとつ烏瓜/田中裕明〉心は烏瓜の明るさにも似て脈うつ。〈…

「先生からの手紙」『田中裕明全句集』ふらんす堂

浜松市立図書館はすでに全館休館となった。多くの飲食店が浜松市からの休業要請を受け五月六日まで営業を自粛する四月二十五日、「先生からの手紙」部分を読む。〈掛稲や音楽会の重き幕/田中裕明〉緞帳の重さにも似た掛稲の豊かさ、芸術の秋でもある。〈暗…

当間青『サーフィン共和国』松琴俳句会

風の強い日、当間青『サーフィン共和国』松琴俳句会を読む。〈カセットの音揺らし来るサマー・ギャル/当間青〉カセットはラジカセか。ギャルも二十世紀の香りがする、きっと肌は日焼けしており汗粒が浮かぶだろう。〈コインロッカーに教科書隠し秋の蜂/当…

安里琉太『式日』左右社

落花生を食べた日、安里琉太『式日』左右社を読む。〈ひとり寝てしばらく海のきりぎりす/安里琉太〉佇まい俳句とも言うべきか。実景としてありうるだけに「きりぎりす」の動詞化をほのめかされたような気にもなる。〈葛咲くや淋しきものに馬の脚/安里琉太…

杉田桂『摩天楼』梅里書房

全国的に緊急事態宣言な春、杉田桂『摩天楼』梅里書房を読む。〈水中花腐蝕がすすむ摩天楼/杉田桂〉水中花も摩天楼も垂直の詩である。〈六月の空は腐りて鳥こぼす/杉田桂〉空と鳥の因果が梅雨により変じた。〈向日葵を凶器にしたる少女かな/杉田桂〉鈍器…

『中拓夫句集』ふらんす堂

社会的距離を保ちながら人間ドックを受診した日、『中拓夫句集』ふらんす堂を読む。〈耳かすみをり流域は林檎園/中拓夫〉「流域は林檎園」というザックリとした景の描き方が俳句ならでは、〈赤とんぼ山の斜面の明るき墓地/中拓夫〉もザックリ。〈霧の駅冷…

放送大学「文学批評への招待」第11章フェミニズム批評(1)

学習課題1 ケイト・ミレット『性の政治学』を図書館などで借りて、著者が男性作家の性差別主義的な描写をどのように批判しているか、確認しよう。 「性の政治の諸例」としてケイト・ミレットはまずヘンリー・ミラー『セクサス』の叙述文を引用し、それに含…

永島靖子『紅塵抄』牧羊社

永島靖子『紅塵抄』牧羊社を読む。〈をみならに畳冷たし利休の忌/永島靖子〉フェミニズム批評としてはいろいろあるだろうけれど、千利休の美への追求と美を追求される生き物としての女という対照がある。〈若鮎の波打つさまに焼かれたる/永島靖子〉生命力…

感覚の不一致

各都府県に緊急事態宣言が発令されているなか、『田中裕明全句集』ふらんす堂の「櫻花譚」部分を読む。〈宿出でててもとさびしき春日傘/田中裕明〉春日傘があるはずなのに「てもとさびしき」はその人が春日傘を差しているのではなく連れが差しているから。…

景のつくり方

山羊を見た日、『田中裕明全句集』ふらんす堂の「花間一壺」部分を読む。〈天道蟲宵の電車の明るくて/田中裕明〉宵という暗のなかに車窓の明のある「宵の電車」、それに赤地という明のなかに黒点の暗のある「天道蟲」の比較。もしかしたら害虫の天道蟲かも…

浜松文芸館の合作俳句

放送大学の学生証をとりに早馬町のクリエート浜松へ寄る。一階に浜松文芸館の合作俳句企画の設備として赤いガシャポン機が置いてある。 ガシャポン機を回すとカプセルが出てきて開くと上五の季語「鶯や」と書いてある。AEDの下にある用紙にその上五を書き…

不在の存在

『田中裕明全句集』ふらんす堂の「山信」部分を読む。〈今年竹指につめたし雲流る/田中裕明〉あきらかに景に人物がいるはずなのに表情やその体臭を感じさせない。今年竹に触れる指を中心にしているのだが、レンズは雲が動いている空へ焦点を合わせている。…

日野百草『無中心』第三書館

異動初日、日野百草『無中心』第三書館を読む。〈それぞれに頂上があり山笑ふ/日野百草〉それぞれ勝手に悦に入りそれぞれ勝手に笑う。〈酒ばかり買ひに行かされこどもの日/日野百草〉ありえそうな主客転倒が愉快、こどもの日の宴なのに遣いに出されるし、…