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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』書肆侃侃房

〈さくらからさくらをひいた華やかな空白があるさくらのあとに/荻原裕幸〉その空白は決して虚しくない。〈ここはしづかな夏の外側てのひらに小鳥をのせるやうな頬杖/荻原裕幸〉「夏の外側」という疎外感がなじむ。〈皿にときどき蓮華があたる炒飯をふたり…

毎日歌壇2021年12月20日

加藤治郎選〈きみにだけ見える青信号がありどんどん行ってしまう さようなら/木村槿〉いつまで君は赤信号なの?とか言われそう。〈お祈りをされる私も煌々と闇を切り裂く電車の一部/花浜紫檀〉脱力、表面張力を失い電車と一体化した就活生。篠弘選〈スター…

中日歌壇2021年12月19日

中日歌壇 島田修三選第一席〈願えどもタイムリープはできなくて二度と会えない祖母のすき焼き/伊藤すみ子〉四日市の新星ついに一席、どんな味のすき焼きだろうか。甘いのだろうか。〈そこはかとやわらかそうな印象で馬の骨とはひとを指すなり/漕戸もり〉「…

鶴舞公園と短歌

名古屋市の鶴舞(つるま)公園は名古屋市昭和区鶴舞一丁目にあり、明治四十二年に名古屋で最初に整備された公園*1だ。小酒井不木の「名古屋スケツチ」には なほ又名古屋市民に近頃追々喜ばれ出した鶴舞公園はスケツチの種にならぬことはないけれど、公園など…

柴田葵『母の愛、僕のラブ』書肆侃侃房

〈そとは雨 駅の泥めく床に立つ白い靴下ウルトラきれい/柴田葵〉ウルトラは広告宣伝の強調のための文句だったのかもしれない。異常なほどの低視線がある。〈紫陽花はふんわり国家その下にオロナミンC遺棄されていて/柴田葵〉オロナミンCに実存感が出る。…

毎日歌壇2021年12月14日

米川千嘉子選〈高校野球応援隊の母たちは黒髪なびかせ姉さんのよう/角田勇〉母たちがねえさんたちのように若々しく見えた。加藤治郎選〈スーパーは更地になってスーパーで買ったヘアピンも消えてしまった/福島さわ香〉春日井市の更地短歌、中日歌壇にも12…

中日歌壇朝日歌壇2021年12月12日

中日歌壇 島田修三選第一席〈子の口に子供は消えて「永久」という名の大人がいつしか揃う/山崎美帆〉謎掛けのような歌だが評のように歯のことだろう。ちなみに私にはまだ子供がいる。第三席〈左手に見えてきました銀杏を独り占めする人が祖父です/伊藤すみ…

毎日歌壇2021年12月6日

伊藤一彦選〈尊敬を出来ない人に恋をしてどんどんわたし年老いてゆく/大石聡美〉老練になるともいう。米川千嘉子選〈真実を暴くみたいに純白の鉄砲百合の蕾がひらく/住吉和歌子〉百合を見るとこの歌を思うだろう。加藤治郎選〈USB端子がうまく挿さらない…

中日歌壇朝日歌壇2021年12月5日

中日歌壇 島田修三選第三席〈デジタルとふ鎧を来たるモーツァルト死語となりゆく“摩り切れるほど聴く”/上竹秀幸〉思うのはレコードかカセットテープか。〈巻貝はコクトーの耳砂浜に少し埋もれで秋の声聴く/滝上裕幸〉評にコクトーの詩の一節。光景が鮮やか…

鷲谷七菜子「花寂び」『現代俳句体系第十五巻』角川書店

〈寒林の奥にありたる西の空/鷲谷七菜子〉西は仏教的な西方浄土だろう、そこへ辿り着くには寒林をぬけるしかない。明暗の対照がある。〈流し雛に水どこまでもうす明り/鷲谷七菜子〉鮮烈な「うす明り」の表現。〈孕み鹿のうなづき寄るも重まぶた/鷲谷七菜…