西村和子特選一席に〈台風や鼓膜のなかを動く水/以太〉が採られ評もいただいた。片山由美子選〈テーブルの林檎一個の香りかな/小熊寿房〉それだけでもう部屋中香るくらいの。小川軽舟選〈天高し鞄に不合格通知/古川麻美子〉再チャレンジする気まんまん。西村和子選〈秋天の城趾に立つひとりかな/津田正義〉城主の気分に浸る。井上康明選〈迢空の歌碑島山に葛の花/後藤秋邑〉硫黄島の〈たたかひに果てにしひとをかへせとぞ我はよばむとす大海にむきて/釋迢空〉だろうか?〈ただ歩くひたすら歩く冬支度/下城かよ子〉筋肉をつけて体温をあげるため歩く。
加藤治郎選〈恐竜の展示 ぼくにも同じくらいすきまがあって光がとおる/薄暑なつ〉心のすきまにも似て。〈花の名を漢字で書けば物騒できれいなものはみんなまぼろし/木村槿〉その名を見てなんか納得させられる。伊藤一彦選〈自販機のうどんに集う人たちに教えてもらう小さな幸せ/栗原公也〉島根県益田市国道9号線沿いにある後藤商店のうどん自動販売機だろう。米川千嘉子選〈剥きかけの林檎の色は変はりたりミサイル来るぞとアラートが鳴り/柴田和彦〉林檎の変色はニュースにくいついていた時間が経過した形容であるし、人がいなくなった街の景色でもある。