以太以外

空の色尽きて一月一日に/以太

西村麒麟『鷗』港の人

まだ台風10号がいる、雨。〈大量の朧ざぶんと湯が溢れ/西村麒麟〉湯ではなく朧が大量、でも溢れるのは湯という不可思議。〈靴の上に置く靴下や磯遊び/西村麒麟〉上下はそのときの気分で変わる。〈きらら虫呉茂一の訳に酔ひ/西村麒麟〉希臘神話かな。〈どうしても何匹か死ぬ金魚かな/西村麒麟〉遅かれ早かれ金魚は死ぬ。〈鳰泳ぐ鳰より別れ来し如く/西村麒麟〉鳰は仲間の鳰から来たのだろう、でも他の鳥、たとえば鴨、と別れて来たような様子ではない。人にはわかりそうでわからない感覚を描く。〈虫売やすぐ死ぬ虫の説明も/西村麒麟消費者庁が出てこないように。〈まだ川の見える暗さや鱧の皮/西村麒麟〉京の時のゆるやかな移ろいを感じる。〈七五三そのまま水の湧く池へ/西村麒麟〉七五三詣の神社に厳島神社系の脇社があったのだろう。写真を撮る。〈暦売る顔を全く上げぬまま/西村麒麟〉顔のわからない人として時の流れを売る。〈つちふるやルバイヤートに果実の絵/西村麒麟〉舶来感の演出。

ゆく秋の大きな蝶の呼吸音 西村麒麟