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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

木下龍也『つむじ風、ここにあります』書肆侃侃房

NHK俳句短歌全国大会から内定通知が来た日、『つむじ風、ここにあります』を読む。〈公園の鉄の部分は昨晩の雨をゆっくり地面に降らす/木下龍也〉そういうことがあるかもしれないと思わせる。「降らせる」が巧み。〈B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る/木下龍也〉人は目的のためだけに他人を見る。〈風に背を向けて煙草に火をつける僕の身体はたまに役立つ/木下龍也〉人というより壁として。〈コンビニのバックヤードでミサイルを補充しているような感覚/木下龍也〉現代文明と腎臓を打ち砕くミサイル。〈愛してる。手をつなぎたい。キスしたい。抱きたい。(ごめん、ひとつだけ嘘)/木下龍也〉村上春樹の再現である。〈カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる/木下龍也〉世界は部屋以外のすべて、すべてのなかにいるのになぜか落ち着かない不思議。〈バスの来る方ばかり見てバスの行く方を私は見ていなかった/木下龍也〉バス停あるある。