以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

笹川諒『水の聖歌隊』書肆侃侃房

梅雨入りした日、『水の聖歌隊』を読む。〈ひるひなか 薄ぼんやりしたエッセイを積み木で遊ぶみたいに読んだ/笹川諒〉そんなエッセイを、たとえばトルコとかベトナムとかコロンビアとか知らない作家のエッセイをまひるに読みたい。〈呼びあってようやく会えた海と椅子みたいに向かいあってみたくて/笹川諒〉椅子に人はいらない。ただ椅子が砂浜に置かれ波と向き合う。そんな景色が愛おしい。〈ほとんどが借りものである感情を抱えていつものTSUTAYAが遠い/笹川諒〉確かに、図書館やツタヤで借りたものだけを鑑賞してできた理性により感情が決められているかもしれない。〈雲を見てこころも雲になる午後はミニシアターで映画が観たい/笹川諒〉ミニシアターでの映画鑑賞したあとの感覚は確かに雲なのかもしれない、雨上がりの午後二時の、青と黄の斑の。〈空想の街に一晩泊まるのにあとすこしだけ語彙が足りない/笹川諒〉現実の町に煉瓦が必要なように空想の街には構成のための語彙が必要だ。