〈等身大パネルのような新社員/西生ゆかり〉この明喩感覚には嫉妬。〈バナナの皮バナナの如く反りゐたる/西生ゆかり〉実を喪っても皮だけでそのものであろうとする。〈パイプ椅子引くや花茣蓙やや歪む/西生ゆかり〉俗により歪められる聖である。〈内側のやうな外側捕虫網/西生ゆかり〉アーモンドチョコレートじゃないけれど、でもどちらでも機能する。〈百円で買える光や夏祭/西生ゆかり〉こどもが好きなやつ。〈噴水が天使に戻りかけてゐる/西生ゆかり〉美しく広がるさまだ。〈蜻蛉飛ぶ蜻蛉の中が狭すぎて/西生ゆかり〉この発見、脳がうごく。〈鉄板に餃子の皮やクリスマス/西生ゆかり〉街っぽい。〈全員サングラス全員初対面/西生ゆかり〉奥ゆかしい。〈鍋焼やもうすぐ終はる資本主義/西生ゆかり〉具を持ってこない人も食べられる。〈白シャツや一人称の入れ替はる/西生ゆかり〉私→おいらだろう、たぶん。〈冷蔵庫と壁の間にずっと居る/西生ゆかり〉涼しいし落ち着く。〈避妊具は出来損なひの熱帯魚/西生ゆかり〉道理でときどき動き出すのか。〈どの塔も天に届かず糸蜻蛉/西生ゆかり〉未踏なりけり。〈水仙や無言電話に息少し/西生ゆかり〉ほのかに生を感じる初春である。〈夜出せば明日の手紙や柘榴の実/西生ゆかり〉いつの昔か速達か。〈両耳はとはに出会はず水の秋/西生ゆかり〉耳を澄まして水も澄んでゆく。〈音楽のはじめは無音冬の水/西生ゆかり〉音は水という感覚。〈髪洗ふ眼に海を育てつつ/西生ゆかり〉生きているから。
蘭鋳に生まれて意味が分かりません/西生ゆかり
