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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

『関大短歌第四号』

台風が逸れた日、『関大短歌第四号』を読む。〈パセリふるだけで綺麗に見えるでしょう愛してもらうことに決めたの/渡つぐみ〉安易な綺麗さとその安易さで手にする愛、サイゼリヤのような生き方。〈こんばんもシャワーヘッドから溢れる数多の天使に身を濡らしてる/矢倉尊〉シャワーヘッドから出る水粒を「天使」と呼ぶとき、祝福されるのは排水口だ。〈容疑者は手に恋のようなものを持ち相手をきつく抱きしめていた/宇尾みやこ〉恋愛罪が適用されます。〈巻末の貸し出し欄も風化して白黒しまがドラマを縛る/楠木珀登〉何回も再生して擦り切れたビデオテープだろう。〈リクルートスーツに映える花たちのおかげで纏う黒を愛せる/御立秋二〉同じ黒を違うものにする花はたぶん赤い。〈オンライン格子の中のヒトの顔対面よりも顔色うかがう/藤原稜平〉zoomの、ちょっとした気付き。〈店内のすべての視線をものにした子どものための蝋燭は赤/石勇斎朱吉〉この赤はあとあと子どもの記憶にまとわりつくのだろう。