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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

小島なお『展開図』柊書房

浜松駅のバスターミナルを見下ろしながら『展開図』を読む。〈ブレザーの紺に吸われてゆく雪がきみの一部のようだった頃/小島なお〉ブレザーに吸われるのではなくブレザーの紺に吸われるという甘愁。〈頭すこし右に傾く癖いつも眠気は袋状に来るもの/小島なお〉袋状に来る眠気をしばらく想像している。あわせて〈足裏がまだ眠たくて木槿咲く団地のそばの投票所まで/小島なお〉。〈体内に三十二個の夏があり十七個目がときおり光る/小島なお〉三十二個の白熱電球が行として並ぶ。〈木には木をあてがうような退屈な時間のなかを自転車でゆく/小島なお〉「木には木をあてがう」という斬新な退屈さ。たぶん並木道をゆく。〈アメリカンスピリットという煙草の名耳に残れり冬雲の光/小島なお〉光にてりとルビ。「スピリ」の部分、発音が光る。