以太以外

空の色尽きて一月一日に/以太

望月哲土『望』

表紙がテカりすぎて写真を撮ると自撮りになる句集。百句収録されているが、すべてに詞書というより解説がついている。〈地道という地図にない道梅ひらく/望月哲土〉「地図にない道」という表現がいい。初春の期待感もある。〈靴下の左右が不明春の風邪/望月哲土〉何も手元に残っていない。〈句読点打ちようがない蟻の列/望月哲土〉ひとつの文脈で呼吸もなくうごく蟻たちを思う。〈蟬時雨もうじき森の沸騰点/望月哲土〉限界へ向けて鳴き続ける蟬たち。〈能面の裏何もない芒原/望月哲土〉「何もない」がいい。芒のこすれる音が能面裏からわきたつ。〈性格の明るい樹から黄落す/望月哲土〉暗い人ほど過去と過去の栄光にしがみつくものよ。〈鉛筆の略図枯野に出てしまう/望月哲土〉鉛筆の地図は簡単に書き換えられてしまうものだから。

f:id:onaiita:20250718204936j:image