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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇中日俳壇2021年1月17日

島田修三選第三席〈図書館のレストラン暮れに閉ぢるとふ気に入りゐたるにこれも訃報ぞ/大谷登美子〉生活習慣が変わること、それも訃報なのだ。〈あんなにも親密だった人の名を半日かけて想い出す老い/水野千代子〉半日かける集中力がある。小島ゆかり選〈なわとびの中に急に入り来てさっと出てゆくような子育て/稲熊明美〉大縄跳びだろう。〈マジックをしてよと言う子生きていることがマジック君は生きてる/三上正〉なんでわれわれは生きているんだろう。栗田やすし選〈塵一つなき百畳の寒さかな/渡辺美智代〉大河ドラマ麒麟がくる」で織田信長が座っていた安土城大広間を思う。〈七日はや白磁の壺のうす埃/小沢芳治〉うす埃は正月七日の慌しさ、でもある。〈弓始紅一点の薄化粧/可知豊親〉弓道は女性が多いイメージがある。長谷川久々子選第一席〈華麗なる名を持つ花や冬夕焼/栗木かず〉評には薔薇とある。なんの花でも冬夕焼に負けない赤い花だろう。〈一つづつ捨てて減らして年用意/羽貝昌夫〉その一つ一つに思い出がある。旧年だけでなく人生の思い出が。