以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

「紫薇」『澁谷道俳句集成』沖積舎

枇杷の種を埋めた日、「紫薇」部分を読む。〈木の実独楽直立せねばうなされて/澁谷道〉均衡を失いはじめた木の実独楽を「うなされて」という把握の見事さ。〈肩先を秋の岬にして男/澁谷道〉故郷すべてが身体であるかのような男について。〈ほのぐらく茶漬の音す雛疲れ/澁谷道〉女の子の成長を祝う日に仄暗い隅においやられた女たちの疲労、彼女たちの啜る茶漬という現実。〈照る雲と降る雲の間の白木槿/澁谷道〉明暗ともに一瞬の天気のすきまに光る木槿の白。圧倒的な美学、そして景が大きい。〈えんとつに雌雄のありし花野末/澁谷道〉花野のはてに煙突が二本という素景。モノクロームが似合う。〈行きがたし美濃はしぐれて二色刷/澁谷道〉美濃の観光案内、二色刷りのパンフレットだろうか。美濃は斎藤道三明智光秀の粗忽な国である。〈夏の旅傷縫う糸でとじおわる/澁谷道〉手術を終えるかのような夏の旅でおしまい。

雷を負う雲のひとりに道を訊き 澁谷道