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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

所以64

  • 計画言語コタヴァKotava
  • a minore ad maiorem perfectionem transire.
  • 「今日は鎌倉殿だよ」と言うと4歳児は「きょうはだれしぬの?」と言う。
  • 11月7日(月)弊局コロナ陽性者が18人になった。第8波に呑まれた。
  • 一つの言葉はその背後に他の諸々の言葉と織りなす諸関係およびそれを支える系譜学をもっている。言葉を読むとは、この諸関係と系譜学を分析することであり(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • たとえ古い言葉を使いつづけようとも、その言葉において覆い隠された何かを見出すことができれば、新しい思想を語ることができる。これまでとは違う思想を表現することができる。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • プロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の各団体からの回答を見た。325団体のうち17団体から回答あり。誇らしい結果だと思う。
  • それ以上の数の回答が欲しかったのであればプロジェクトのやり方に問題があった。
  • 要望書の書き方から読めるのは、セクハラ問題の解決は二の次で、あえてなるべく多くの無回答を羅列したかったという意図の可能性。既存の協会・結社という構造にダメージを与えられるので。私ならそうしていた。
  • 結社はどちらかというと編集組織であって、セクシャルハラスメントが起きやすい批評会(句会・歌会)は、必ずしも結社の管轄下にあるわけではない。
  • そもそも「セクハラをしないため」というタイトルに難点がある。セクハラはするものではなく、相互の働きによって起きてしまうもの。ある程度の思考ができる人からはこの難点をすぐに見破られてしまう。
  • ハラスメントは日本語では困らせることや嫌がらせと訳される。困るのも嫌だと解釈し判断するのもした方ではなくされた方である。
  • 虚構に基づく活動は現実の問題へ対処できない。
  • それに「セクハラをした」と見做されてしまった人から話を訊いたのだろうか?
  • いろいろなことを考えました。なにが足りなかったのか。どこをミスしたのか。私が「女」で「若く」て「知名度のない」「連句人」だからではないのか。だとしたら、今後同じような被害者が生まれ、彼ら彼女らが懸命に告発したとき、返ってくるのは同じく「無回答」なのではないか。(【最後に】ご支援ありがとうございました)
  • ↑失敗からは多くのことを学べるけれど自分の言動のようなすぐに変えられるものではなく「女」「若く」「知名度のない」といった容易には変えられない自分の属性へのこれまた容易には変えられない相手の態度に原因を置こうとすると何も学べなくなる。
  • 今回は結果報告でプロジェクトを知ったけれど次があれば支援したい。15年後の未来のために。
  • 新人君が空ぶかしからの強アクセルで転倒し自損事故、脚を骨折。
  • 普遍的ではなく普遍性をもたない思想を掲げた活動に世間からまともな対応を求めるなら入念な根回しが必要になる。思い上がらず、正義を気取らず。
  • 思い上がり、正義を気取り、高圧的になると(ただ誰かを支配したいだけなのかも)と疑われ「ああ、この事案は触れないほうが得策だ」と敬遠されてしまう。
  • 無謀だからこそ応援したくなる。
  • 第34回葉桜短歌賞佳作〈なぜここに私はいるの病院のベッドをぐるり囲むカーテン/西林美沙子〉なにがあったのか。
  • Kovimo aŭ kronvirusa malsano de 2019 (internacie COVID-19 aŭ esperante KOVIM-19[1]) 
  • 新型コロナ感染症関連用語集 / Terminaro pri KOVIM-19
  • エスペラントでコロナをどう言うか。
  • フェミニストが存在しかつその活動がやりにくいという状況は学力格差が大きくなって、下位層と上位層がそれぞれ広がってるということ。
  • 11月8日(火)、弊局のコロナ陽性者20人を超えた。支社から小包要員の応援が来た。
  • ムッツリ助平がバカにされるのはスケベ人間という比較的低い位置にあることを隠して真面目人間という比較的高い応分の場を求めたからである。
  • 逆ならおもしろみもある人間と見られただけだったかもしれぬ。

春日いづみ『地球見』短歌研究社

恵まれた世代の詩という感じ。〈雁垂れの厨と厠を書き込めば図面に水音仄かにひびく/春日いづみ〉設計図面に生活がありありと再現された、水道管はまだ書き込まれていないけれど。〈国家なきクルドの民に長閑にも「お国はどちら」と聞きてしまへり/春日いづみ〉エスペラントの造語法ではkurdioなんて言えてしまうけれど。〈ヘブライ語の時制を語る君のこゑ雪の京都ゆ湿りを帯びて/春日いづみ〉哲学あるいは神学と冬の京都の共鳴は好き。〈わが胸に球根植ゑし心地なり一体一体めぐりしのちは/春日いづみ〉球根がいいね、彫像展を観た比喩として。〈浮きあがる突起を友は星と呼び展示は神秘とかの日語りぬ/春日いづみ〉点字読みは星読みとなる。〈指に読む文字にいかなる響きありや点字聖書を購ひに行く/春日いづみ〉手話や点字の神秘さと宗教とがよく合う味わい。〈残りわづかな消毒液を噴霧してドアノブ拭けば銀のかがやき/春日いづみ〉銀のかがやきはそこにいた細菌が死滅したその遺骸のかがやきだ。〈アドレスにpacem友は灯しをり送信の度ひろがるpacem/春日いづみ〉「※ラテン語 平和」としか書いていないけれどpacemは平和paxの単数対格、ミサなどで言うdona nobis pacem.などに由来するのだろう。〈アラビア語の光はヌールやはらかき若草のやうな文字をなぞれり/春日いづみ〉نور、この単語はイスラーム神学などでよく使われる。

所以63

  • 国道1号線浜松パイパスの上り新天竜川橋付近は平日午前7時を過ぎると浜松→磐田への通勤車両で混みだす。
  • エスペラントの読みとは、言霊的な常識と知識による読みではなく、その度に創造していく読み。
  • エスペラントの造語法がそうさせる。そして、エスペラントの記述ではその度に様態と意味との隔たりを再確認させられる。
  • 袋井市豊沢、樂土舎での樂土の森現代美術展2022、茶室めく土の家のなかで体感した中平泰之さんによる映像と音の作品が良かった。時空のひろがり。
  • STAGE ITNY糸乃舎にあったスズキサチコさんの大きな絵画、肉体から精神がこぼれどこへでも流れてゆきそうになる青い遠近法。
  • あちこちに奈木和彦さんのハンガーがあり見つけるのも愉しみ。
  • 窯跡地・地中の家では小林由季さんの空間作品「彼方を編む」、段々と駆け上がる闇の中で光の震えを見つけた。
  • 蠟燭に火を点け、消した。手の形を手で確かめた。足で地を踏みしめた。そういった樂土の森での体験、涅槃へ。
  • 場所の気象・・・今この場所にしかない力に満ちた気の象が身体の気象に作用し、太古の記憶にある建設の本能をつき動かす。(村松正之「生起する場所」『樂土の森アートプロジェクトの25年』樂土舎/樂土の森アートプロジェクト)
  • 〈満月に気づかず鉛筆削る音/古崎千尋〉一般の部A優秀賞『第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集』、満月は確かにその鉛筆削りの世界に共存しているけれど未だ気づかれていない。そこが無作為で良い。
  • 〈「空の色=私」の方程式/芥田玲〉毎日文化センター賞『第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集』、未知数としての空の色に私があてはまってしまった驚き。
  • 〈先生の前髪北上桜前線/二木里菜〉都道府県賞『第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集』、ちょっとひどい。もちろん悪意はないのだろうけれど。
  • 〈五時までの鎧ぬぎすて石鹸玉/大沼志帆〉都道府県賞『第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集』、鎧と石鹸玉の硬さと脆さの対比がいい。
  • 〈マスクして美人の今が全盛期/平田陸〉都道府県賞『第三十三回伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集』、ふと目にとびこんできた。茨木のり子の詩を思う。
  • それで初期時代かりにjeですましておいたのが、他の意味のはっきりした前置詞にとってかわられるようになりました。現在のエスペラントでは、jeはほとんどそのすがたを消しています。ただ1つかならずjeを使うばあいが残っています。それは je la tria horo のときです。(川崎直一『基礎エスペラント大学書林
  • 非モテは他人からすれば卑小な問題にすぎないけれど、本人からすれば生命としての、生物としての一大危機である。その落差が激しすぎることと日本社会が死を見えないようにしてきたこととはリンクしている。
  • 生死という哲学的には明確な現象*1よりも気持ちという曖昧な現象を尊重しすぎた結果だ。
  • 当事者の怒りを正当化する社会運動は、当事者以外を萎縮させ支配してやりたいという欲望に駆られている。
  • 豊橋市のんほいパーク、土日のコアコスタリカは混むので11時前から券売機の前に並ぶのがよい。
  • なかよし牧場・ふれあい広場のカピバラの餌やりもすぐなくなるので30分くらい早めに待機しておくのがよい。
  • 「同性愛を受け入れられない」は現代の日本社会では言ってはならない。しかし、「性愛という趣向を公表することを受け入れられない」は言える。
  • 常識、それはなんとも嫌な言葉だけれど、そこへ立ち戻って考えるのもひとつの対抗者 kontraŭuloとしての態度だ。

*1:医学的には曖昧だが

加藤治郎『海辺のローラーコースター』書肆侃侃房

レモンが印象に残った歌集だった。〈ボディソープぬりたくっているやわらかい刃に指を滑らせながら/加藤治郎〉やわらかい刃は熱を帯びた危険な皮膚だ。〈あちこちにスイッチがあるまちがって明るくなった地球の一室/加藤治郎〉地球から一室への想像力の落差にくらくらする。〈Excelのセルにレモンを置いてきて午後は静かなオフィスである/加藤治郎〉レモンという小道具の色が静寂のなかに生きる。〈本棚はことばの湊 未来の友とあなたの歌を語りつくしたい/加藤治郎〉未来は未来だろう。〈家にいろ(旅に出ようよ(ぬばたまの黒いリュックの配達バイク/加藤治郎〉これもまたウーバーイーツ短歌として。〈咳をしてもよろしいですかさらさらと月のひかりは水槽に差す/加藤治郎〉咳さえためらわれるほどの静けさのなかに、月光の刺さる水槽の、たとえばあぶく。〈頭部にはずいぶん穴があることのどうかしている眠れない夜/加藤治郎〉穴からいろいろ入ってきて眠れないんだ。〈にんげんの断面図みる想いあり満員電車鉄橋を渡る/加藤治郎〉鉄橋にもしピアノ線が結んであったら、どのように人々は切れるのか、なんて想像する朝の満員電車である。〈現在は無所属という略歴の春の渚にたわむれている/加藤治郎〉根無し草であるのは自由だけど、ちょっと手持ち無沙汰である。

中也*1は自由詩に向かう過渡期の詩人だったのか。そうではないだろう。音数律詩と自由詩を統合した〈民族の詩〉を構想していたのではないか。(加藤治郎「詩歌の旅人」)

くちびるを見せあっている散る花の鶴舞公園風の冷たさ 加藤治郎

*1:引用者註:中原中也、1907-1937 詩人。

所以62

  • スピノザが言っているのは、法制度や理性的計算だけでは政治秩序は作り出せないということである。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 全句集は全句/集ではなく全/句集。
  • これと反対に知的な理解力に秀でた人、知性がうまく育っているヒトは、想像力の方はむしろ控え目というか、いつも引き締めを怠らない。(スピノザ、吉田量彦訳『神学・政治論』光文社古典新訳文庫
  • 日本におけるコミュニケーション力とは相手と組織の応分の場を理解し、それに沿って行動すること。
  • 世界エスペラント協会に、日本を代表して加盟している国内団体は、財団法人日本エスペラント学会です。東京都文京区元町1丁目13に事務所があり、世界でも、有力な国内団体のひとつとして、知られています。(三宅史平『エスペラントの話』大学書林
  • ↑昔の日本エスペラント協会の事務所。
  • 話すという点では、かなり劣りますが、日本のエスペランチストは、だいたい1万人前後と考えてよいと思います(三宅史平『エスペラントの話』大学書林
  • ↑1976年ごろの日本国内エスペランティスト人口推測。
  • LGBTqの人が多く自殺したいと思うのか、自殺したいと思うほど想像力や思い込みの強い人が多くLGBTqとなるのかは、可能な限り検証する必要がある。
  • 11月3日文化の日、入野町の龍雲寺と佐鳴湖公園駐車場のあいだにあった喫茶飛行場を更地にする工事をやっていた。閉店するとは聞いていたけど残念。

  • 人工言語Lingua Ignotaとは。
  • 独裁者であろうとも、権力に内在する手段の限界を飛び越えることはできない。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • なぜ思想の統制を行ってはならないか。それが権力の自由にできる手段のキャパシティを超えた目論見だからである。そのようなことを目論む体制は過度に暴力的にならざるをえない。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • もし哲学イベントを興業するなら「哲学的とみられたい」人々が応分の場をSNSなどを通じて占められる場を設計する必要がある。文学も芸術も同じだ。
  • 長野県の林檎「秋映」が安くておいしい。
  • 〈発言がゼロの会議や蚯蚓鳴く/小林俊之〉「JP労組新聞」2022.11.7、静寂かと思ったら音が聴こえそう、かと思ったら聴こえない蚯蚓鳴くという季語の妙。
  • 社会的弱者とか性的少数派GLATを名乗っていたほうが社会的に有利なのでサピオセクシュアル sapiosexualとかかっこいいのを名乗ろうか?
  • エスペラントを学ぶことで自らを言語的マイノリティへ追いやれる。
  • lerni esperanton povas igi onin malplimulto sen seksa introspekto. kompreneble esperantisto estas lingva malplimulto.
  • ロシア語よりもスペイン語よりもハングルよりも中国語よりもヴェトナム語よりも左派っぽい言語エスペラントは,、その非民族性と少数派であることに支えられている。

黛まどか『北落師門』文學の森

噴水へのこだわりと季節への哀惜が感じられる。噴水は吟行地にあるのかな?〈春の旅島が寄つたり離れたり/黛まどか〉動く船を定点として航路から観察している。旅の躍動感がある。〈青空に触れて噴水折れにけり/黛まどか〉重力の存在を忘れた主観からの知覚としてのおもしろさ。〈囀を残して発てり只見線黛まどか〉また只見線に乗りたくなる。〈青空のどこが弛み梅香る/黛まどか〉やはり冬から春へ、はゆるむでしょう。〈荒星のなかより夜間飛行の灯/黛まどか第一次世界大戦のあと空軍の職を失った飛行機操縦士たちの、危険な夜間飛行へ賭ける勇気とその陰の悲哀を思う。〈蝶ひとつ力のかぎり凍てにけり/黛まどか〉「力のかぎり」という肯定表現が切ない。〈がらくたに春の夕日の載つてをり/黛まどか〉がらくたへの優しい温度の目線がある。〈ていねいに眼鏡を拭いて緑の夜/黛まどか〉噴き出る樹脂に鏡面が汚れる感じがよく出ている。〈朴葉みそ焦がして冬の旅惜しむ/黛まどか〉旅館の食事だろう。〈初島へ航跡伸びる花みかん/黛まどか〉花みかんの白があることで海が鮮やかに映える。〈冷房の隅々にまで女将の目/黛まどか〉よく気が利く女将の宿だろう。

父の日のことさら白き雲ひとつ 黛まどか

佐藤弓生『薄い街』沖積舎

〈だしぬけに孤独のことを言う だって 銀河は銀河の顔を知らない/佐藤弓生〉象の背を知らない象のように向き合えない銀河の巨大さ、孤独がある。〈弥生尽帝都地下鉄促々と歩行植物乗り込んでくる/佐藤弓生〉年度末に通勤する種族は脳のない植物人間のようなものかも。それと〈読む人の読む文字ぬすみ見てしより前頭葉はやわやわ芽吹く/佐藤弓生〉の植物感とは呼応する。〈ひとのためわが骨盤をひらくとき湖の底なる浴槽はみゆ/佐藤弓生〉水底に沈む浴槽に、自らの子宮のなにを投影するのか。〈五月五月わたしはふいごのようである風が枝踏む森に抱かれて/佐藤弓生〉わたしから出る風がまるで私のようにして森をさまよう。〈星動くことなき夜のくることもなつかし薄き下着干しつつ/佐藤弓生〉全てが止まった夜、ほぼからだひとつで宇宙へ出る。そこで得られる浮遊感の味はおいしいか。〈花に箸ふれさせるとき生きてきた香りほのかにほろにがい骨/佐藤弓生〉箸のつよさほどの感触が愛おしくなる、うつくしさ。〈火にこころ吸われておれば蠟燭はこころの外をくらくするもの/佐藤弓生〉火へこころが吸われたら火も薄れてくるかな。こころの外を明るくするはずの蠟燭がこころに火を奪われることでなぜかこころの外を暗くしてしまうのだ。こころは点らない。〈うごかない卵ひとつをのこす野に冷たい方程式を思えり/佐藤弓生〉鳥の卵か恐竜の卵か、そこに卵がのこってしまった自然のうごきは冷たい方の方程式でしか解けない。〈復讐はしずかなるもの氷たち製氷室に飼いならされて/佐藤弓生〉一定の温度に保たれて保管される復讐心というおそろしさ。〈川の街わたりわたりて行き交うに川の前世を誰も知らない/佐藤弓生〉誰の気にもとめられない、でも確かにあるもの、としての川。〈とざすべきまぶたいちまいもたぬ空 ころされるのはこわいだろうか/佐藤弓生〉直視しなければならない、殺されるのを。〈みずいろの風船ごしにふれている風船売りの青年の肺/佐藤弓生〉肺の模型として風船が使われることもある。〈この人といつか別れる そらみみはいつも子どもの声をしている/佐藤弓生〉幼少期の自分がいつまでも心の隅にいて、語りかけている。〈靴ひもをほどけば星がこぼれだすどれほどあるきつづけたあなた/佐藤弓生〉歩き続けて疲れてからだからぽろおろこぼれ落ちていくものがある。それを星とよぶということ。〈風ゆきつもどりつ幌を鳴らすたび四月闌けゆく三月書房/佐藤弓生〉懐かしい、今はない京都の書店。月の境界の淡い感じ。

骨くらいは残るだろうか秋がきて銀河と銀河食いあいしのち 佐藤弓生

所以61

  • いま住んでいる地域を都市と考えるか、小都市と考えるか、あるいは農村と考えるかは自分次第ということだ。(小松理虔『新地方論』光文社新書
  • 地方文芸賞の受賞式へ旅行して詩歌の話をして地元のスーパーマーケットで買い物をして一時的市民になりたい。
  • ブラジルのとうもろこしクスクスしか売っていない浜松市よ。
  • mi pensis, ke maiza kuskuzo el Brazilo estas iomete diferenca de kuskuso el Magrebo.
  • クスクスは蒸すだけなので蓋のある容器と湯さえあれば食べられる食材、キャンプ向き。
  • 他人のtweetなんて誰も読めていないのだから日本語以外で書いて問題はない。
  • それは我々が複雑な原因の連鎖については無知であって、身体の変状の結果だけを意識しているからだ。意識される結果は意志という単一的な力であるため、行為が一元的に決定されているかのように感じるのである。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • →相互依存して依存先を増やすことで自立する話と繋がる。
  • 存在するだけで同質性の高い集団のパワーバランスが崩れるから嫌われてしまう人、いるよね。
  • 呼びようのなかったものに名を与えるのが詩人の仕事だ。
  • poeto nomas tion, kiu ne havas nomon. kaj hajkisto denove nomas tion. kiu havas nomon.
  • 無から有、有から無への途上にある時、我々は何をなすべきか。(マツダ・イチロウ「ごあいさつ」『樂土の森アートプロジェクトの25年』樂土舎/樂土の森アートプロジェクト)
  • 東風明朝、その補正としてのさざなみ明朝
  • igoku
  • とりわけ、同質性が強く働く地方においては、書店とは「都市」を起動する場だったのではないのか。(小松理虔『新地方論』光文社新書
  • 積読エスペラントでlegotaj librojではなくlegutaj librojだろう。
  • さて、スピノザの言う能動を最も簡便な形で示すならば、それは、自らが自らの行為の原因になっているということである。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 人がねたみの感情を抱くのは、自分と能力において同等であるはずと思っていた相手が、自分を上回る能力を発揮したり、自分には成し遂げられない成果を残した時である。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • →俳句や短歌の新人賞結果発表後を観察すればその現場を見られる。
  • 能動性と受動性もまた「程度gradus」において捉えられなければならない。(國分功一郎スピノザ岩波新書

交差する浜松古本市

10月30日(日)快晴、松菱百貨店跡地で開催されたオンラインクロスロード2022内の浜松古本市以外社として31冊の蔵書を持参して参加した。

蔵書を古本として売ること

自宅の本棚にある本を売るということは自分の趣味を(器官を)白日のもとへさらけ出すことでもある。並べるのは、売る決意を固めたとは言えど一度は買う決意を経た本だからだ。趣味をさらけ出すと同じ趣味を(器官を)持つ人が自然と寄ってくる。私と同じか下くらいの若い男女が遠州近辺で俳句や詩を読んでいると知ったことが今回の参加の最大の収穫だった。こういった出会い、人と人との交差が古本市の愉しみである。

午前中の賑わい、珍客も

9時過ぎにスーパーカブ110ccで搬入し、松菱跡地の北西入口近く、読書日和さんのマイベッド兼本屋の東に、南向きに陣取った。クロスする「ロード」には面していない。東隣は第一回浜松古本市以来の出展という高橋書房さん、そのまた東隣は湖西市ブックス・チカラータさん。まだコロナ禍なのでジェットミンミン製の紅白マスクで顔の下半分を覆い、迷彩シートと蜜柑ケースの上に本を並べ値札を書いてそれぞれの本に挟んで準備していると10時になった。古本市開始からお客さんが立ち寄ってくれ、そして本が売れた。古本市は時間が経てば買えそうな本がなくなってしまう早いもの勝ちのイベントだからだろう。営業開始前の八月の鯨さんが来てくれバイクの話をした。あるときは某宗教の方が来てシネマイーラで朝やっている映画の鑑賞券をくれた。教祖というか総裁の長男氏の話をしたら少し盛り上がった。枕草子や海外文学好きの方や岡井省二の『鯛と鯛』に興味を持ってくれた青年、仏教に興味のある女性が立ち寄ってくれた。冷やかし客となんてことない会話をするのも楽しい。どんな人にも春秋左氏伝校本かトルコ語を勧められる。

出店者としての心がけ

午前中に10冊売れて、12時過ぎにはすき家の葱玉牛丼をテイクアウトで食べた。会場は白い細かい砂が舞うのでときどき本の表紙の砂を払う必要がある。そして今日は遊びネクタイを締めてきた。また、挨拶や会話をするときは正面で向き合わないようなるべく体を斜めにして話しかけた。出店者として心がけたことはこの3つだけ、あとは自由にやった。ときどき玄関ライブを聴きに店をぬけた。

午後はまったり

午後は午前より客は減った。でもハロウィンで仮装した人は増えた。漢文を楽しむという女性や俳句や詩を読むという女性が来てくれた。浜松しんぶん部の方が私の投稿した手書きしんぶんの内容確認に来てくれ、国際補助語エスペラントについて話した。

なんとあの本が売れた!

午後には7冊売れた。そして15時過ぎには江戸時代の春秋左氏伝校本という和綴本をセットで1000円で買ってくださった猛者もいた。「枕になる」とおっしゃっていたが、数日で読んでしまうかもしれない。15時半には片付けてライブハウスの裏をスーパーカブでまわり撤収した。

消費税なく本を売る秋日和 以太

所以60

  • 人物に問題があるからその人の俳句や短歌や詩や小説などの文芸作品を掲載すべきではないという意見には賛同できない。たとえ死刑囚であっても。
  • 何らかの権威が価値判断を独占するのではなく、より遠くへ向けて語られるいくつもの声が複合し、落ち着く所へ落ち着くような「ちょうどよく公的な」空間。それは新しい書き手によって、すでに欲望されているはずのものだ。/書きながら、これはまるでエスペラント語の理想のようだと思ってしまった。/けれど、芸術はもともとエスペラントなものなのだから、批評がそれを夢想することは、必然である。(上田信治エスペラントの夢 俳句の批評は役に立つのか 」週刊俳句)

  • japana hajko havas necesecon de 17 silaboj pro ke tiu estas japana. sed esperanta hajko ne havas tiun necesecon.
  • すべてのものが嘲笑してゐる時、夜はすでに私の手の中にゐた。(島田龍編「錆びたナイフ」『左川ちか』書肆侃侃房)
  • いまはあまり夢を見ません。見てもすぐに忘れてしまひます。疲れてゐるからではなく、夢を見ても最初に聞いて貰へる友達も居なくなつたし、そればかりか現実は私にとつてすべて夢だからです。(島田龍編「童話風な」『左川ちか』書肆侃侃房)
  • おーいお茶を飲んでいたら〈黒鍵に指攫われて野分かな/池山明恵〉に魅了された。すげーな。
  • youtu.be
  • 朝日歌壇、投稿ハガキは毎週2千数百通。朝日俳壇もある。私書箱だけどいったん集配営業部におりてくるのかな、それとも郵便部留まりかな。いずれにせよ晴海郵便局はたいへん。
  • 縮景園ではなくて借景園があってもいい。ぜんぶ借景だとしてその園には何が残るのか?
  • 大学は見聞を広めるための機関であり就職予備校ではないのだから大学を出て「なんでこんな仕事しているんだろう」と嘆くのは理に合わない。
  • 松菱跡地でのmingle village2020でクスクスを食べてクスクス作りたい欲が上がっている。
  • 30a de oktobro, mi timas halovenon ĉe Itevono 이태원. tie mortintaj spiritoj kaj demonoj pliiĝis. agi kiel mortinto proksimigas sin al mortinto.
  • 死者のように振る舞うと死者へ近づく。
  • konskripcio de sud-koreio povas savi vivojn en paca tempo.
  • 梨泰院ハロウィンの件で日本にも徴兵制度が必要という意見が出てもいいけど、徴兵制度が復活しないといいな。
  • Koreio nomiĝas Ĉosono 조선 en Nord-Koreio kaj Hanguko 한국 en Sud-Koreio. okcidenta nomo, Koreio 고려 estas neŭtrala nomo inter du Koreioj aŭ ambaŭ Koreioj. Koreio estas nomo de mezepoka reĝlando en Ĉosona duoninsulo.
  • 夢は切断された果実である(島田龍編「花」『左川ちか』書肆侃侃房)
左川ちか全集

左川ちか全集

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所以59

  • スピノザはまず無限を肯定した上でそこからその否定としての有限を考えるのである(神の視点)。だからスピノザの無限には、無際限の場合のような外部が存在しない。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 十六世紀以降、手稿は出版後に破棄されるのが出版界の常識だったからである。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • スピノザエチカ』手稿、ヴァチカン図書館
  • 物としての存在ens realeと理屈上の存在ens rationis
  • スピノザはいまもこの世界にともにいるのか。それとも世界とスピノザの間は遠くなり、スピノザは必要とされなくなっているのか。(佐藤一郎「あとがき」『知性改善論/神、人間とそのさいわいについての短論文』みすず書房
  • ordo et connexio idearum idem est ac ordo et connexio rerum.(E2P7)
  • 身体のどんな特徴と外部からの刺激のどんな特徴とが、いかなる相互作用をもって変状をもたらすのか、精神にはそれを知ることは困難である。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • nuntempe sifilisaj pacientoj pliiĝas inter precipe junaj virinoj en japanio. unu el kaŭzoj estas ke senadministrita prostituado pliiĝas. mi timas.
  • mi ne estas kacingisto, sed nuntempe mi devas porti kacingon por seksumi sekure.
  • 図書館俳句ポストで〈新涼のコインロッカーみな閉ぢる/以太〉が佳作だった。
  • 〈手袋の五指恍惚と広げおく/対馬康子〉『現代俳句』2022.11、脱いだ私の恍惚でもあるか。
  • 〈きさらぎを鳥の名前と思いけり/北川美美〉『現代俳句』2022.11、空へのあこがれ。
  • 〈用紙切れのランプ点滅冬に入る/植垣規雄〉「蜻蛉の空」『現代俳句』2022.11、寒々とした機械の点滅、命の尽きるように。
  • 〈疲れきった母象のようバスが行く/小山貴子〉「蟻二匹」『現代俳句』2022.11、揺れながらゆく。
  • 〈人日の大きくたるむ送電線/滝浪武〉「人日」『現代俳句』2022.11、電気に重さはないけれど人口に比例してたるむような。
  • 〈秋の浜海は巻かれて貝の中/松王かをり〉「海原へ」『現代俳句』2022.11、するすると巻かれてしまわれる。
  • ティーバッグの紐染まりゆく春の月/西野奏子〉「相互フォロー」『現代俳句』2022.11、まったりとした時間の共鳴がある。
  • 〈コロナ禍を夜風と思ふ洗ひ髪/篠遠早紀〉「木の根明く」『現代俳句』2022.11、こういう静かな談林調いいね。
  • youtu.be

  • youtu.be

  • 〈うちの子も感染したというひと言を午後の話題に言い出せぬまま/井上佳香〉『短歌21世紀』2022.11、うちもまだ両親には言っていない。
  • 〈死んだあと名前を残すことよりもいま目の前のあなたを愛す/小澤拓夢〉『短歌21世紀』2022.11、今の愛か未来への名か、やがて永遠の相がその選択肢に加わるだろう。
  • 〈こんなにも煌めくものかソーダ水あなたの去った夜のガストの/小川竜駆〉『短歌21世紀』2022.11、交わした言葉の陰影がソーダ水のグラスへ投影される。

所以58

  • スピノザはつまり、哲学体系がどのようにして発生するのかに最大の関心を抱いている。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 俳句は言語の欠陥を活かす。
  • 俳句は、アラビア語ヘブライ語のように、名詞で修飾した方が良い。形容詞で修飾するよりも。
  • 郵便配達員、とくにバイク、の交通マナーや危険運転を郵便局へ主張するとき、主張者が自らの正当性と肥大化した正義感のため事実を誇張して郵便局へ伝えると誰がそのバイクを運転していたのか特定できない。
  • デカルトの渦動説v.s.ニュートン万有引力説は、アインシュタイン相対性理論によって渦動説にやや軍配があがるらしい。
  • 真空vacuumを否定し必然性を肯定するスピノザ、もので満たされた世界。
  • ナポリの漁師にして革命家マサニエッロに扮したスピノザの自画像があったという。ところで、フェルメールの「天文学者」のモデルはスピノザか?
  • 〈「夢といううつつがある」と梟の声する ほるへ るいす ぼるへす/佐藤弓生スペイン語の人名の響きと梟の声と。
  • 〈きよらかな歌うたうとき月光はおもい鋏のにおいをまとう/佐藤弓生〉重い鉄のにおいが月光のにおい。
  • non esse opus, ut sciam, quod sciam me scire.
  • youtu.be

  • 長嶋水徳は夜の東京で漏れ聴こえる音だ。
  • 何らかの趣味へ政治を持ち込むな、という文言は単にユーモアもエスプリもない発言をするなと言っているに過ぎない。政治になると途端に幼児レベルの発言しかできない人がそこにいるだけだ。
  • NUN-vortoj 分野別時事日本語エスペラント用語集
  • 〈遠回りに使う道とその道に住んでいる人が遠回りについて思っていること/野村日魚子〉目的ではなく手段とされる人たちの抱く思いについて。
  • 私は、写生というのは、目にしたすべての事象のなかから、ただ一点だけを残して、他はすべて消し去る作業であると考えている。(永田和宏『近代短歌』岩波新書
  • まさに定義は発生的であることによって、対象のあらゆる性質の導出を可能にする(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 発生的定義、円を「中心から周に向って引かれたその線〔の長さ〕が等しい或る図形」と定義するのではなく「片方の端が固定され、もう一端が動くようになっている任意の線によって画かれる図形」と定義する。
  • 物の思念、言い換えるなら定義は、それだけが、別のものどもと結びつけられてではなく、注視されるかぎり、物のすべての特性がそれから結論されうるようなものであることがもとめられる。(スピノザ佐藤一郎訳『知性改善論』みすず書房
  • どうすれば人間は、悪魔を仮定しようなどという考えが心をかすめもしない生き方ができるようになるか、それを考えようではないか。これこそが『エチカ』で開陳されるスピノザ哲学である。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • もし悪魔がまったく神と対立していて、神からは何も得ていない物であるならば、それは、われわれがもうすでに前もって語った無とぴったり一致する。(スピノザ佐藤一郎訳『神、人間とそのさいわいについての短論文』みすず書房
  • われわれは、ほかの人たちがするように、憎しみや妬みや憤りやそうした類の情念の原因をみつけるために、悪魔を立てることを必要としていないからである。(スピノザ佐藤一郎訳『神、人間とそのさいわいについての短論文』みすず書房

岸本尚毅『雲は友』ふらんす堂

平らかに心すべってゆくか。〈ひとところ黒く澄みたる柿の肉/岸本尚毅〉黒く、だけではなく澄んでいる。そこが甘いところでもある。〈はらわたの動くを感じ日向ぼこ/岸本尚毅〉不随意、つまり意識外の臓器が動く。体内で別の意志が働くのを恒星からの光で熱せられる地球で感じる。その別趣として〈椅子と人友の如くに日向ぼこ/岸本尚毅〉か。〈顔焦げしこの鯛焼に消費税/岸本尚毅〉この滑稽さは上手い。〈春塵やマクドナルドの黄なるM/岸本尚毅〉その真ん中のVはいつも埃をかぶっている。〈青き絵の中に白き日避暑の宿/岸本尚毅〉郷土画家の風景画が飾られた高原のロッヂだろう。のんびりと絵でも見て過ごす。〈ひつぱられ今川焼は湯気漏らす/岸本尚毅〉大判焼や御座候とも。この「漏らす」は中動態だ。〈くちばしの見えぬ向きなる寒鴉/岸本尚毅〉くちばしがないように見えてぎょっとしたのだろう。そういう寒さ。〈あたたかや石を境に違ふ苔/岸本尚毅〉多様なもののが境を決めることで共存する世界だ。〈始まりの終わりに似たる花を見る/岸本尚毅〉卒業と入学と。〈青き空甘茶に暗く映りけり/岸本尚毅〉青に何が加わって暗くなったのかと想像させる。〈明易やもの置けそうな凪の海/岸本尚毅〉きっと瀬戸内海や浜名湖などの内海だろう。

秋の雲子供の上を行く途中 岸本尚毅

 

所以57

  • 〈猛勉強表の尾行大あくび/信濃太郎〉山鹿泰治と延島英一の電気工としての猛勉強ぶり。
  • la originala teksto de Risma Manifesto
  • 宮下玲奈と河北彩花の顔の違いは前者がやわらかくて、後者はとがっている。しかし似ている。
  • hajbuno estas hajkeca prozo.  ekz) mi provlegas hajkon de hajbuno.
  • 松菱跡地のオンラインクロスロード2022「風と砂利と音」で長嶋水徳Nagaŝima Minoriを聴いた。電子の粒が飛んできてぎゅるんぎゅるん
  • youtu.be

  • 英語を廃して国際語を課し第二国語とす。(北一輝日本改造法案大綱』)
  • 〈一日に一度はうたうくせとなりぬ黎明をうたうエスペラントのうた/斎藤英三〉京都地方評議会委員長
  • 滑稽俳句大賞受賞作品
  • 神の啓示を受けるために必要なのは、並外れて完全な精神ではなく、むしろ並外れて活発な想像力なのだ。(スピノザ、吉田量彦訳『神学・政治論』光文社古典新訳文庫
  • ラテン語は誰の言語でもなかったこらこそ、普遍性を目指す学問の言語にピッタリだったのである。(國分功一郎スピノザ岩波新書
  • 松菱跡地のベッドはいろいろ落書きできてよかった。
  • 〈芒原落とすことばの未然形/対馬康子〉「芒原」麦2022.11、荒涼たる芒原でこぼれたことばにならないことば。
  • 〈空蟬のひとつは私の脱いだもの/小野富美子〉「脱皮」麦2022.11、私は蝉というより、そういう感情を脱ぎすてた存在であるという表明か。
  • 〈冷房車におっぱいのある昼さがり/笠井亞子〉「ひげ根」麦2022.11、誇張されている。
  • 〈丁寧語のごとく葛切を掬う/野川京〉「白紙委任状」麦2022.11、そうでないと壊れてしまうからであるし、作る人の姿勢でもある。
  • 〈洗いすぎてちぢんだ青いカーディガン着たままつめたい星になるの/北川草子〉少女の顔をして。
  • 〈美しい地獄と思う億年の季節を崩れつづけて月は/佐藤弓生〉宇宙にはひとつの季節がある。

毎日歌壇毎日俳壇2022年10月24日

西村和子特選一席に〈台風や鼓膜のなかを動く水/以太〉が採られ評もいただいた。片山由美子選〈テーブルの林檎一個の香りかな/小熊寿房〉それだけでもう部屋中香るくらいの。小川軽舟選〈天高し鞄に不合格通知/古川麻美子〉再チャレンジする気まんまん。西村和子選〈秋天の城趾に立つひとりかな/津田正義〉城主の気分に浸る。井上康明選〈迢空の歌碑島山に葛の花/後藤秋邑〉硫黄島の〈たたかひに果てにしひとをかへせとぞ我はよばむとす大海にむきて/釋迢空〉だろうか?〈ただ歩くひたすら歩く冬支度/下城かよ子〉筋肉をつけて体温をあげるため歩く。
加藤治郎選〈恐竜の展示 ぼくにも同じくらいすきまがあって光がとおる/薄暑なつ〉心のすきまにも似て。〈花の名を漢字で書けば物騒できれいなものはみんなまぼろし/木村槿〉その名を見てなんか納得させられる。伊藤一彦選〈自販機のうどんに集う人たちに教えてもらう小さな幸せ/栗原公也〉島根県益田市国道9号線沿いにある後藤商店のうどん自動販売機だろう。米川千嘉子選〈剥きかけの林檎の色は変はりたりミサイル来るぞとアラートが鳴り/柴田和彦〉林檎の変色はニュースにくいついていた時間が経過した形容であるし、人がいなくなった街の景色でもある。