以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

津川絵理子『夜の水平線』ふらんす堂

新静岡百町森へ行った日、『夜の水平線』を読む。〈受話器置く向かうもひとり鳥渡る/津川絵理子〉電話で気持ちは渡る。〈若狭より電気の届くふきのたう/津川絵理子〉原子力発電所とふきのとうの形状について。〈橋脚は水にあらがふ夏燕/津川絵理子〉夏燕も空気に抗うかたちであり、付句の要領だ。〈冬薔薇満場一致とはしづか/津川絵理子〉確かにそうである。異論がなければ静かだ。〈映写口の塵きらきらと梅雨に入る/津川絵理子〉強い光で塵が見える。連想が繋がらなそうだけど暗さが梅雨の感じなのだろう。〈ものの芽や年譜に死後のこと少し/津川絵理子〉死後に少しづつ知られてゆく人のことを思う。〈銭湯の屋根草黒し雲の峰/津川絵理子〉黒と白の対照、変わらないものと変わるものの対比。

晩涼や原田芳雄の煙草の火 津川絵理子