以太以外

空の色尽きて一月一日に/以太

対馬康子『百人』ふらんす堂

ブログタイトルの百人を変換しようとして百年になって驚く。そういえば金子兜太『百年』という句集があった。〈ホッチキス滝はどこまで綴じられる/対馬康子〉滝を綴じるという感覚はいままでなかったけので新しい、滝はこちらとあちらを隔てる裂け目のようなものかもしれない。〈白き花摘む台風の目の真中/対馬康子〉花を摘む舞台として整いすぎて、あとが怖い。〈東京の西日は猫の舌ざわり/対馬康子〉東京の西日には粒子感があるのかも。〈風鈴は海の中まで揺れている/対馬康子〉風鈴の拡張現実といえる。音の聞こえる範囲までが風鈴かも。〈太陽の筋肉であり鮭のぼる/対馬康子〉北海道で見るような鮭の蠢くさまの描写として、おもしろい。〈夜の息吐ききっており遠花火/対馬康子〉スターマインが終わったのだ。〈心臓の半分は夜雁の声/対馬康子〉体内のちいさな惑星としての心臓を思う。〈まっさらな柩が芽吹いていますか/対馬康子〉死と再生を思う。〈稲光ふいに液体はかなしい/対馬康子〉空気がないから、吸って吐くような空気のなかにある稲光の理論とは別の世界だから、かなしい。

百人に死は百通り薔薇の香水/対馬康子