中日歌壇
島田修三選第二席〈苦瓜の葉の間の青き青き空日本列島梅雨明けにけり/亀井好子〉窓に簾のようにしてたて掛けて実る苦瓜だろう。第三席〈「大谷のホームランの音は美しい」アメリカ人は詩人が多い/坂神誠〉あっちの野球解説者はみんな詩人だ。〈遊泳中の海馬がふっと我に返る五時の目覚まし鳴る五分前/塩谷美穂子〉この海馬はタツノオトシゴかもしれない。小島ゆかり選第三席〈果てのない宇宙の黒を訝しむラムネの瓶の底の晴天/広沢麻佑子〉「訝しむ」がおもしろい。
朝日歌壇
佐佐木幸綱選〈打ち上げ場囲む沼辺に蒲繁り花火大会今年も中止/桜井雅子〉中野か浜名湖か。〈毎日が成長の日々零歳児今朝から本を食べなくなった/高田真希〉本がぼろぼろになるまでに食べ物じゃないと気づいてよかった。高野公彦選〈家中で最も長く海外に在りしは亡き父 捕虜としてなり/藤田好子〉これは馬場あき子選にも。意外な視点、海外駐在員などではなく。〈セミの声カエルの声に鳥の声 人の声だけしないあの町/サトウ隆貴〉放射能汚染された町は。〈呼び捨てで初めて君の名を呼んだあの砂浜の灼ける足跡/池田雅一〉鮮やかで淡い海浜の風景。馬場あき子選〈伊那富士も甲斐駒岳も青霞み伊那の七谷夏草みどり/小林勝幸〉天竜川へ注ぐ伊那の七つの川、もう一度原付二種で走りたいけど国道152号で今は国境を越えられるのか。