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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇朝日歌壇2021年9月5日

中日歌壇

島田修三選第一席〈四本のささがき牛蒡つくる間にいらだち忘る夕立も上がり/祖父江寿枝〉日常の作業のなかで感情を整理していく。許すべき点も出たのかもしれない。〈いくつもの入道雲が重なりてスコアボードの背景となる/口野光康〉入道雲は選手や家族の期待だ。小島ゆかり選第一席〈妻のメモ“いつもの赤いヨーグルト”店の棚には赤二つあり/上竹秀幸〉おまえの「いつもの」がわからねぇ、という嘆きが聴こえてくる。〈明日になればただの紙屑なのですが朝は大事な新聞紙です/金田品子〉新聞が新聞紙になり、紙屑になる。〈二丁目を赤いバイクの郵便夫右に曲がれば蜻蛉も曲がる/河合秀幸〉普通は蜻蛉は逃げてゆく。

朝日歌壇

高野公彦選〈鉄棒のバーを手放し宙を舞う金メダリストの〈色即是空〉/鬼形輝雄〉悟りの境地のような顔をしている体操選手。永田和宏選〈アルバムに貼れない写真が一番の私の思い出だったりします/上田結香〉そんなかこもある。馬場あき子選と佐佐木幸綱選〈ワクチンをヴァイオリニストは腰に打つ腕も楽器の一部であれば/住吉和歌子〉佐佐木幸綱選〈自らもショパンと同じ体重に落として挑むショパンコンクール/福吉真知子〉体重40キロ台なんて母と同じくらい。