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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇朝日歌壇2021年8月15日

8月15日ということで中日新聞には平和の俳句が載っていた。いとうせいこう選〈洗えども洗えどもなお焼けピアノ/拝田章〉当時ピアノを持っていたのは上流階級だろう。すさまじさ。黒田杏子選〈兜虫兜太は戦争許すまじ/高山清子〉たぶんそうだっただろう。

中日歌壇

島田修三選第一席〈背を割りて淡き緑の宝石は力の限り蟬となりゆく/棚橋義弘〉白ではなく緑というのが人間の緑児を思わせる。第三席〈入り口にナースと医師は並び立ち燕の巣立ち見守りおりぬ/水谷敦子〉作中主体の立ち位置が気になる。入院患者かな。〈外出るな家にて過ごせと達しあり新婚みたく夫と暮らすよ/二ツ木美智子〉もとは二人だけだったと思い出すとき。小島ゆかり選第一席〈今もまだ腕時計して寝ているか卒寿こえたる施設の父は/武藤岳志〉習慣は偉大である。〈サンダルの紐の形に日焼けして子は帰り来る熱風の中/倉知典子〉熱風だからくっきりと日焼けしているのだろう。〈男孫さんかわいいでしょうと云われても三十五ですししかも無口で/江川冨子〉わはは。

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永田和宏選〈右からは棒きれ左からは小石ポケットの中は夏の公園/笠井真理〉こどもに入れられたのだろうか。〈はじめての成人映画観るための初の上京十八の夏/久野茂樹〉胸がいろいろな意味でドキドキした夏。馬場あき子選〈大げさな母の看病なつかしむ一人暮らしの風邪の布団で/松田わこ〉母の看病はどの家も大げさ。佐佐木幸綱選〈誰もみな想像しない戦争があつたからまたあると祖母言う/川野佳奈〉人は自分が何をしているのかを知らない。〈酒出せぬ緊急事態の居酒屋でやけに目につくアルコール液/後藤文彰〉戦後の密造酒みたいな立ち位置のアルコール消毒液。〈運動会冠婚葬祭奉仕作業村を簡素化してゆくコロナ/木村泰崇〉村は人と人とのつながりだった。高野公彦選〈夏空に聳えて青き天王山ふるさとよりも長く住む街/鍵山奈美江〉心の支柱としての山。