以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

中日歌壇朝日歌壇2021年9月12日

中日歌壇

島田修三選〈さながらに地獄を脱する蜘蛛の糸アフガニスタンを飛行機は発つ/小山肇美〉芥川龍之介蜘蛛の糸であろう。〈女性から男を口説いてくれたならどんなに楽かと若き日思いぬ/坂部哲之〉女性の方が会話は得意だから。〈夫と我微妙に話しずれ行くもあいづち打ちて会話のつづく/岩本和美〉老夫婦はきっと言葉ではなく雰囲気をやりとりしている。小島ゆかり選第一席〈「扇風機足で消すこと教へたの母さんでしよ」「いや教へてはない」/杉山要江〉「母」や語尾だけで三人の関係が分かる。第二席〈案山子案山子紺の絣の香具山の母の着物の案山子案山子よ/中山いつき〉香具山は持統天皇の歌からだろうか。〈何か斯うちよつと幸せふくふくと熟れしイチジク匂ふ小径は/近藤きみ子〉舌が味を思い出している。

朝日歌壇

永田和宏選〈死に際に私を丸ごと受け止めて頷く人に会えたらいいな/神谷紀美子〉「それでよかったんだよ」って。馬場あき子選〈車椅子の少女に若き駅員が「押しますからね」と声をかけをり/今西富幸〉佐佐木幸綱選〈のんびりとしたいんだろな君の描くラオスの地図はアヒルに似てる/今村佳子〉願望が祖国を描く形に出る。高野公彦選〈黒きパネル山や田んぼに増殖す地球の膚の瘡蓋のごと/黒木和子〉「地球の膚の瘡蓋」の画数が太陽光パネルの異様さに合う。