労組機関紙俳句欄で〈初夏や開け放たれる鳩舎の戸/以太〉が最優秀だった次の日は新聞歌壇デーの日曜日。
中日歌壇
島田修三選第二席〈染みのある「萬葉秀歌」めくりをれば都電の切符はさまれてゐる/梅村和生〉若き日、東京時代の愛読書か、旅をしてきた中古本か。〈香月の赤い屍体は永遠に我等に語る戦争の愚を/滝上裕幸〉香月は画家の香月泰男、立花隆への鎮魂歌でもある。小島ゆかり選第三席〈封筒に「退」「職」「届」をきっぱりと一気に書き上げ紙の白さよ/天野和江〉白は潔さ。〈葉桜の濃ゆき下陰昭和より続く自動車図書館停まる/棚橋義弘〉「昭和」から走り続けたかのような。
朝日歌壇
佐佐木幸綱選〈信号機つく交差点を出水に泳いで渡るへら鮒の群れ/小山年男〉へら鮒は信号機の色の意味を知っているわけではないのに。高野公彦選〈頼朝と政子の恋の逸話ある逢初川を土石奔れり/瀬戸敬司〉熱海の土石流。永田和宏選〈君の角「恋矢」といふや蝸牛私にもそれがあればいいのに/市森晴絵〉その恋矢、相手の寿命を縮めるらしい。馬場あき子選〈弘徽殿派 私の他にいると知り古文なつかし日曜の朝/三村直子〉朝日歌壇上でのやりとり。