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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇中日俳壇2021年5月9日

中日俳壇で長谷川久々子選第三席だった、〈児を園に預けて妻と半仙戯/以太〉。島田修三選第二席〈一面の青麦畑を波立たせ郵便バイクが直線を引く/山本公策〉晩春のころから初夏にかけて田舎の畦道を走ると気持ちいい。第三席〈自動ドア開きたる間に菜の花の香は乗りきたり豊橋に着く/河合正秀〉「豊橋」など穂の国の豊系の地名は春に合う。小島ゆかり選第二席〈花びらの形と色を問うごとく看護師は便の形状を聞く/塩谷美穂子〉お花摘みとはこのことか。〈退職し職業無職と記入して無色のように透明になる/山田真人〉無職でこそ出せる自分の色もあるよ。栗田やすし選〈桜蕊降るや鉄打つ音の中/見山さなえ〉桜と鉄の対照が鮮やか。長谷川久々子選〈花の闇ぬけて二人の旅かばん/宮島ともこ〉コロナ禍という闇をぬけて、と読んでしまう。〈旅立ちや車窓離れぬ青蛙/佐伯起巳枝〉そこまで旅したいのか青蛙。

朝日歌壇

高野公彦選〈消灯の病室窓より見下ろせばマシーンで走る人ら煌々/塩田直也〉消灯と煌々、病室とマシーンの対照があざといまでに切れてる。永田和宏選〈夫の勝ちしパソコン将棋のお相手は顔のわからぬ初級のだめ子/出口真理子〉これってきのあ将棋かな。馬場あき子選〈春になれば線路づたいに来るという羚羊に会う朝の衝撃/沼沢修〉鉄道は一時停止したのか、そういえばかつて釜石のあたりで私の乗っていた列車が鹿を轢いたことがあった。