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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇中日俳壇2021年5月16日

第38回都留市ふれあい全国俳句大会の高校生大学生の部にて〈映写機はマスクへ映す海の蒼/以太〉が【山梨県教育委員会教育長賞】と【正木ゆう子先生准賞】をいただいたけれど授賞式は中止と連絡があった。島田修三選第二席〈溶けやすき淡雪に似る詩語ひとつ文字にするべく家路を急ぐ/久米すゑ子〉スマホとかは使わない、あのノートに書き留めなければ消えてしまうことば。小島ゆかり選〈戦乱の世ではなくとも日常を失うことあり 夏草茂る/佐藤晴美〉本歌は〈夏草や兵どもが夢の跡/芭蕉〉だろう。栗田やすし選〈亡き母の漬けたる梅酒独り飲む/石川和男〉何年物だろう。少しずつ飲むのだろう。長谷川久々子選〈躑躅咲く赤きポストと並び咲く/足田正英〉郵便差出箱の色を真似たかのような鮮やかさ。

朝日歌壇

高野公彦選〈「処理水」の入った瓶を持つ総理両手に真白き手袋をして/篠原俊則〉雄弁な手袋。永田和宏選〈授業中ねむるユメノを叱れない夜通し母の世話をしてゐた/松井惠〉ヤングケアラーか。〈流木に友と腰かけセブンスターくゆらせた日の遠い潮騒/西向聡〉セッタとか呼ばれて。佐佐木幸綱選〈学舎の楠の下哲学を語る新人久しく見えず/近藤克己〉プラタナスの木ではなく楠というのがいい。若さゆえの苦しみとは。〈部活終へ職員室に眠りたる若き同僚を起こさずにゐる/佐藤きみ子〉湖西市の職員室風景。教員のサービス残業だろう。