中日歌壇に投稿されている高津優里さんがNHK短歌に入選していた。島田修三選第一席〈バイクよりひらりと降りたる青年がヘルメット脱ぎ美少女となる/半田豊〉ヘルメットをとると長い髪が垂れていたら良い。第二席〈海よ鷗よ丘の上の蜜柑の樹よ空に詩集を放り投げし少年よ/八神正〉水平線→空→地上→詩集→少年という画面展開、勢いがある。〈闇からの抜け穴のごとき後の月二人を照らす尾花の土手に/影山美穂子〉酒井拓夢氏のフレーズ「この夜の出口と見紛う丸い月」を思い出す。二人は駆け落ちでもするのか。〈みすずかる信濃より賜びし冬りんご噛めばきりりと入れ歯にひびく/梓由美〉「入れ歯」のオチで笑う。小島ゆかり選第一席〈牡蠣小屋に牡蠣打つ人は息白く手の平に抱く冬の浜名湖/葛谷誠二〉湖の凝縮としててのひらにある牡蠣殻。第三席〈エレベータ開けば間近に表情を置き忘れたるごとき顔あり/半田豊〉半田さん両選者で特選。「間近」なのか。〈八十二歳の父にハートがいっぱいのLINEするわれ四十八歳/大鋸友紀〉微笑ましい。栗田やすし選〈研ぐほどに刃物の匂ふ寒の水/富田範保〉魚屋の包丁を思う。長谷川久々子選第三席〈車イス伊吹颪を押し返す/戸田実〉力強い腕を思う。