〈花篝祇園の空の暮れきらず/西村和子〉木の花と人の花と。〈駅員の申し送りに燕の巣/西村和子〉のどかな田舎の、きっと単線の駅の景だろう。〈遮断機のぎくしやく上がり梅雨晴間/西村和子〉通れる道の開けたさまと、梅雨の雲の晴れ間と。〈隠れ棲む文士と女優木槿垣/西村和子〉宮城まり子と吉行淳之介を想像した。木槿の鮮やかさとまばらさがいい。〈検疫を待つ船あまた春寒し/西村和子〉コロナ禍を思い出した。〈マフラーや口ごもるとき句が生まれ/西村和子〉音にならない音からことばができてゆく、マフラーの色を媒介に。〈向日葵の待ち伏せに会ふ夜道かな/西村和子〉向日葵のヒトガタ感をよく表現している。〈歩み寄るほど噴水の音粗雑/西村和子〉発見の句だ。〈蛇衣を脱ぎ少年の声太る/西村和子〉ふしぎな相関関係。〈かき氷一人一卓占領し/西村和子〉夏の小屋だろう。それぞれ他人同士でかき氷を食べる。〈冴返る我が身にいくつ蝶番/西村和子〉ガチガチ音をたてる。
愚かなる人類に年改まる 西村和子















