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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

「和紙」『林翔全句集』コールサック社

もうすぐ浜松市でポエデイがあるので全句集を読む。〈かの童まだ遠凧につながれる/林翔〉遥か感がある。大きな景色だ。〈ものの芽をうるほしゐしが本降りに/林翔〉だんだん激しくなる雨。春も深まりあたたかくなる。〈訊きかへす梅雨の電話のなほ遠し/林翔〉濡れて漏電感のある電話。よく聴こえない。〈滝あふる近視痩骨の教師らに/林翔〉仕事に励む教師らの姿、意志を滝の姿に見る。〈電力地帯煌々の灯に銀河懸く/林翔〉遠州の地の光と天の光との対照。〈放送終り人寝て虫の地の厚み/林翔〉テレビかラジオ放送後の眠りの世界。〈石蹴つて石光らしむ卒業期/林翔〉蹴石すらも光るように思える時期だ。〈休暇果てむ晩夏の樹液手に粘り/林翔〉晩夏の記憶としての樹液がいつまでもいつまでも手に粘りつく。〈満開の花のことばは風が言ふ/林翔〉風も花の色をして。〈冷じく絵具削りしナイフ痕/林翔〉えのぐ、だろう。ペンチングナイフだろうか。

 

林翔全句集

林翔全句集

  • 作者:林 翔
  • コールサック社
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