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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

虫武一俊『羽虫群』書肆侃侃房

〈しまうまのこれは黒側の肉だってまたおれだけが見分けられない/虫武一俊〉しまうまの黒側の肉と白側の肉が違う肉だと見分けるのは色ではない、味だ。〈自販機の赤を赤だと意識するたまにお金を持ち歩くとき/虫武一俊〉コカ・コーラの赤だろう。赤は目には入っているが購買意欲を刺激する赤ではなかった。お金があれば刺激されるものもある。〈唯一の男らしさが浴室の排水口を詰まらせている/虫武一俊〉毛ではなく液だろう。〈敵国の王子のようにほほ笑んで歓迎会を無事やり過ごす/虫武一俊〉居場所のないけれど自分が主役の歓迎会をうまく言った歌。ひとつの記念碑となる。〈労働は人生じゃない雨の日を離れてどうしているかたつむり/虫武一俊〉「労働は人生じゃない」は金言集に収められる。〈水を飲むことが憩いになっていて仕事は旅のひとつと思う/虫武一俊〉と読み比べたい。

あかぎれにアロンアルファを塗っている 国道だけが明るい町だ 虫武一俊