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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

西村麒麟『鶉』港の人

ひょろひょろと帰路。〈なつかざる秋の金魚となりにけり/西村麒麟〉懐く金魚とは? 夏飾るとも読める。〈いくつかは眠れぬ人の秋灯/西村麒麟〉首都高から見た高層マンションの灯。〈虫の闇伸びたり少し縮んだり/西村麒麟〉音の波として。〈上野には象を残して神の旅/西村麒麟〉象に跨がらない神もいる。〈細長き日本の楽器初しぐれ/西村麒麟〉音も細そう。〈闇汁に闇が育ってしまひけり/西村麒麟〉闇「ぴるる」〈ポケットに全財産や春の旅/西村麒麟〉気軽な旅、気楽ではないかもしれないが。〈燕来る縦に大きな信濃かな/西村麒麟〉多摩の横山の横に対して。〈掛軸の山河が遠し夕蛙/西村麒麟〉心の距離だ。〈夏蝶を入れて列車の走り出す/西村麒麟〉終点まで。〈訪れし人の数だけラムネ瓶/西村麒麟自動販売機のない峠道。〈香水や不死身のごときバーのママ/西村麒麟〉ずっといる。

どの島ものんびり浮かぶ二日かな 西村麒麟