以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

希望の音

僕は行くよ』に〈後頭部をつめたい窓にあずければ電車の音が電車をはこぶ/土岐友浩〉という短歌が収められている。この歌で後頭部の持ち主は目をつむっている。そして骨伝導で「電車の音」を聴いている。もちろん電車をはこぶのは電気による駆動であるけれど、後頭部の持ち主は、そんな駆動なんてどうでもよくなるほど疲れている。もしかしたら雨が降っている。世界は音だけとなった。提喩に過ぎなかった音が世界を動かしていく。疲労のなかに残された僅かな希望のような音がいつまでも響く。