以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

小佐野彈『メタリック』短歌研究社

雨のなか硝子に囲まれたストリートピアノを観ながら『メタリック』を読む。〈ママレモン香る朝焼け性別は柑橘類としておく いまは/小佐野彈〉とある未知数としての柑橘類。〈セックスに似てゐるけれどセックスぢやないさ僕らのこんな行為は/小佐野彈〉繁殖のための行為が単に恋愛のようなものを確かめる行為と成り果てて。〈赤鬼になりたい それもこの国の硝子を全部壊せるやうな/小佐野彈〉無関心の国日本でクリスタル・ナハトを起こせるだけの力を秘めるのは何故か。〈寝るまへに飲みくだすべく鈴蘭の骨のやうなる錠剤を割る/小佐野彈〉鈴蘭は確か毒を含んでいた。テレホンカードで錠剤を割る。〈受け容れることと理解のそのあはひ青く烈しく川は流れる/小佐野彈〉理解とは突き放すこと。〈農耕の罪を知りたる人間をざつと洗つて雨雲は去る/小佐野彈〉土を掘ることはかつて穢れだった。恩寵のように雨。