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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

中日歌壇中日俳壇2021年4月11日

島田修三選〈ゆつくりと近づいてくる春の船眩しきものを山積みにして/後藤進〉スエズ運河封鎖以後だと海運のたいせつさに気づく。〈裏庭といふ言の葉の淋しさよ裏にも裏の春は来ている/稲熊明美〉小さな世界にも春がある。〈月光に浮かべる線路終点は亡き吾子の住む銀河の世界/太田泰子〉銀河鉄道はいつも切ない。小島ゆかり選〈いま花が降り注いでいることでしょうわたしがあなたを歌にしたから/山本織〉故人の歌だろうか、故人の世界へ花吹雪。〈歯磨き粉昔ほんとに粉なりき父の使ひしヤニ取り粉の香/石川休塵〉私は知らないけれど昭和の事物だろう。栗田やすし選〈山城へ靄立ちのぼる木の芽時/中道寛〉山城といっても今は山だろう、かつてのもののふの重いのような木の芽。長谷川久々子選〈遠州の風に慣れたる春ショール/磯部節子〉強い風にも優雅に翻る。