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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

「黃旗」『山口誓子句集』角川書店

週刊金曜日金曜俳句に一句採られた日、「黃旗」部分を読む。〈ほのかなる少女のひげの汗ばめる/山口誓子〉観察力の賜物と言うべきか、あるはずのないものがあるに言及する方式と呼ぶべきか。〈夏草に汽罐車の車輪來て止る/山口誓子〉詞書は「大阪驛構内」の有名句だが、改めてクローズアップとストップモーションの技法を使った映画的な句であると述べておく。〈船ゆけり夏の島山率てゆけり/山口誓子〉動の船が静の島山を率ているとした、もちろん島山は船に続いてはいかないけれど、続いているかのような一瞬を「率て」と描写した。〈陵さむく日月空に照らしあふ/山口誓子〉の緊張感と景の大きさは〈菜の花や月は東に日は西に与謝蕪村〉をはるかに超えている。〈掌に枯野の低き日を愛づる/山口誓子〉の詞書は「特別快車」、掌へ映った低き日は通り過ぎる電柱によりちらちら動いている。