以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

「冬の犬」「冬の犬以後」

投句した鉄塊の第十回VT句会が開かれた日、『石部明の川柳と挑発』新葉館出版の続きを読む。〈どの継目からも水洩れする身体/石部明〉継目のある身体という新たな視点がある。〈毛を抜いてしずかに月のふりをする/石部明〉月は無毛という断定がある。〈マヨネーズほどの謀反を志す/石部明〉謀反を志すのがマヨネーズでなければならないのはありふれていて子供も好きな調味料であるから。練りカラシではダメだ。そういえばマヨネーズはマヤ人と関係があったような。〈裏声になるまで天日干しにする/石部明〉声帯と太陽の関係がさり気ない。〈夕ごはんまでは確かに野であった/石部明〉吉野などの地名にもある「野」に込められた複層性が夕ごはんのあいだに解かれたのだろう。空腹のときだけ見られる「野」として。〈罫線を横に跨いで死者の列/石部明〉縦罫線は跨いではいけないという不文律がある。それを跨げるのは死者の列だけ。〈肉屋などぼおっと点す銀河沿い/石部明〉目黒川の川べりにあるような肉屋のような星の肉屋と思う。尺度のほどよい混乱がある。

死に水のあまりはただの水捨てる 石部明