以太以外

辷り台に脚を忘れた虫の闇 以太

千葉聡『微熱体』書肆侃侃房

雨続きで滅入る日、『微熱体』を読む。〈教科書など鞄の底に押し込んで夏は海辺のホテルでバイト/千葉聡〉本の形がはみ出た鞄を持って毎朝海へ通う、光り。〈コンビニまでペンだこのある者同士へんとつくりになって歩いた/千葉聡〉創作に手を染めた罪深い二人だけどお似合いの二人として。〈二人して交互に一つの風船に息を吹き込むようなおしゃべり/千葉聡〉今そこで言わないと何かが破裂しちゃいそうなおしゃべり。〈半分だけポストに入れた朝刊は超夜型の天使の羽かも/千葉聡〉配達短歌のひとつの到達だろう。〈ボクサーと走る夜明けの海沿いの道 足音の残響を聞く/千葉聡〉定型を外れた「道」が際立つ。〈セロテープ引きだし続けているような雨音 渋谷は空に傾ぐ/千葉聡〉渋谷という湿気都市が好配置。角海老の裏手、東急ハンズ感がある。〈演劇論をたたかわせてもコカコーラ、アイスコーヒー見た目は同じ/千葉聡〉黒い液体、褐色に泡立つのは同じ。飲んでみないと分からない。〈真夜中の屋上に風「さみしさ」の「さ」と「さ」の距離のままの僕たち/千葉聡〉発見の詩。〈海岸へ続くレールに捨てられた手紙は雲の影に轢かれて/千葉聡〉海と空と大きな景のなかの手紙の小ささ、されど大事さ。