以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

日野百草『無中心』第三書館

異動初日、日野百草『無中心』第三書館を読む。〈それぞれに頂上があり山笑ふ/日野百草〉それぞれ勝手に悦に入りそれぞれ勝手に笑う。〈酒ばかり買ひに行かされこどもの日/日野百草〉ありえそうな主客転倒が愉快、こどもの日の宴なのに遣いに出されるし、お菓子は買えない。〈原爆がふたつも落ちてさくらんぼ/日野百草〉ふたつは並ぶのではなく列ねるとでも言うのか。〈樺太の南半分残る蝉/日野百草〉一九四五年八月の南樺太という在り方について考えさせる。〈武器もなく立たされてゐる案山子かな/日野百草〉立たせているのは国家であり、人間の集団だ。〈生粋の無産階級おでん食ふ/日野百草〉「生粋の」と「無産階級」の組み合わせがすでに面白い。〈軍艦の肉づき寂し冬の波/日野百草〉「軍艦の肉づき」というエグみが効いた。

夏休み楽屋で宿題する子役 日野百草