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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

藪内亮輔『海蛇と珊瑚』角川書店

「現代俳句」の来年二月号のティータイムに私の小文が載るとハガキが届いた日、藪内亮輔『海蛇と珊瑚』角川書店を読む。〈話しはじめが静かなひととゐたりけりあさがほの裏のあはきあをいろ/藪内亮輔〉裏は「り」とルビ。花に喩えられる人は幸いだ。〈雨といふにも胴体のやうなものがありぬたりぬたりと庭を過ぎゆく/藪内亮輔〉雨の胴体の擬態語は「ぬたり」。〈太陽に雨は降らぬといふことをあなたの比喩として使ひたい/藪内亮輔〉比喩と〈夕空と夜空のまざりあふ場所をしづかにゆきて帰らざる鷺/藪内亮輔〉実景と。〈冬の野に川ゆはぐれし水がありしばらくは鳥をあつめてゐたり/藪内亮輔〉そういう水になりたい。〈眼底に雪はさかさに降るといふ噂をひとつ抱きて眠りぬ/藪内亮輔〉音も無くさかさに降る雪。