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以太以外

病名は人間性や夕野分 以太

九鬼あきゑ『海へ』角川文化振興財団

自由律俳句部門で浜松市文芸賞をいただいた表彰式でその死を知った九鬼あきゑ『海へ』角川文化振興財団を読む。舞阪図書館で借りたので〈旗千本はためく元日の港/九鬼あきゑ〉や〈一湾に舟犇めける淑気かな/九鬼あきゑ〉を舞阪港の景かと思う。〈永き日の机に辞書と花林糖/九鬼あきゑ〉手垢で黒ずんだ、使い古された辞書なのだろう。花林糖から、同じものを大切に補修しながら使い続ける人柄と分かる。穏やかな春の日にそんな人とともに過ごす時間。〈着ぶくれて鳥の眠りに近づきぬ/九鬼あきゑ〉鳥の眠りと着ぶくれ、羽毛に埋めた首を想像させる。

大漁旗鳴りに鳴りたる二日かな 九鬼あきゑ

新居漁港の大漁旗