浜松市布橋の犀ヶ崖古戦場跡には、天明俳壇の雄・大島蓼太の句碑〈岩角に兜くだけて椿かな/蓼太〉が立つ。首をまるごと落とすように花ごとポトリと落とす椿の赤が、山武士たちの鮮血を連想させる生々しい幻想の句だ。夕暮れの犀ヶ崖に鎌鼬が出るという伝説とともに想像力をかきたてる。『俳人大島蓼太と飯島』飯島町郷土研究会によればこの句碑は、昭和十一年に「雪門系の俳人野沢十寸穂(ますほ)の筆で、久野仙雨らが発起人となり建立」されたという。雪門とは大島蓼太の師・服部嵐雪の流れを汲む一派のこと。
横にして見るや浜名の横霞 大島蓼太