以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

髙柳克弘『未踏』ふらんす堂

中央図書館の郷土資料室で髙柳克弘『未踏』ふらんす堂を読む。〈卒業は明日シャンプーを泡立たす/髙柳克弘〉卒業後の生き方はシャンプーをしているときの閉ざされた視界のように不明瞭、それこそ〈ことごとく未踏なりけり冬の星/髙柳克弘〉のような未知への期待感で胸がふくらむ。〈夜の新樹どの曲かけて待つべきや/髙柳克弘〉iPod登場以降の句、夜の新樹が待つ人の半袖とか夜風の流れとかを想像させる。そういえば渋谷ハチ公像は樹木に囲まれていた。〈一心に読みつぐ眉間夜の新樹/髙柳克弘〉も参考に。〈ストローの向き変はりたる春の風/髙柳克弘〉風表現のひとつとして。プラスチック時代のストローには何色か色があるはずで、それが春めく。〈星充ちて夜の絶頂きんぽうげ/髙柳克弘〉きんぽうげの使い途として正しい。〈何もみてをらぬ眼や手毬つく/髙柳克弘〉盲目ということではなく、現在を見ず、手毬の弾む未来を凝視している一瞬を捉えた。〈水族館かすかに霧のにほひせり/髙柳克弘〉霧はきっと海獣の臭いの喩として。〈さみだれや擬音ひしめくコミックス/髙柳克弘〉擬音は頭のなかで鳴るのであり、「さみだれ」と開いたのは実景というより頭のなかの五月雨、梅雨の煩わしいイメージを強調したのだろう。〈掌のうちをライタア照らす野分かな/髙柳克弘〉掌のうちの明るさと外の景の暗さの対比がシュルレアリスム絵画めく。

桐の花ねむれば届く高さとも 髙柳克弘