第二十七回西東三鬼賞は前回に引き続き佳作〈かたつむりは裏日本で即位する/以太〉ちなみに前回の佳作は〈ニンゲンの子を添えて売る蛍売/以太〉な日、中筋祖啓『経験と未来』を読む。〈私の自信は無くしたのではない 私の自信は消えたんだ!/中筋祖啓〉痕跡さえも消えて。〈本当に静かな男になりました/中筋祖啓〉これが静かな男の手のひらです。〈ものすさまじき、ただの人/中筋祖啓〉最強の普通人として。〈会う度に記憶喪失になっている/中筋祖啓〉だから楽しい。〈眼球の裏っ側から微笑んだ/中筋祖啓〉微笑みの筋肉のはじまりとして。〈坂道が大地で肺を叩いてくる/中筋祖啓〉息切れ。〈青空に全く力が入らない/中筋祖啓〉だから(力が)ぬけるような青空と呼ぶ。〈一番近いデパートの名を呼ぶ小学生/中筋祖啓〉そこのデパートがその小学生の楽園だった。〈茶の中の蛍光灯がペットです/中筋祖啓〉へ? 〈待ってましたと言わんばかりの白い雲/中筋祖啓〉何も言わずに雲は浮いている。ただ嬉しかっただけで。
傘を置いて雲が白い 中筋祖啓