以太以外

蒼褪めた巨漢は笑う水澄んで 以太

「花石」『柿本多映俳句集成』深夜叢書社

点温膏派だった私がロイヒつぼ膏を買ってきたら貼温膏派の妻もロイヒつぼ膏を買ってきた日、「花石」部分を読む。〈朴の花指のうごくはおそろしき/柿本多映〉朴の花の性器感と指の動きの奇異な対比、繁殖力がありそうな「おそろしき」〈なまかはきならむ夜明の白百合は/柿本多映〉夜は濡れ、朝に乾く白百合として。〈足音を足音が消す枯木山/柿本多映〉足音が互いに消し合うとは足音しか音のない枯木山。〈コスモスの丘を捲れば薄烟/柿本多映〉コスモスの丘が皮としてその中身は薄烟という虚ろという奇想。〈天の川壜吹けば壜鳴りこもる/柿本多映〉音の「鳴りこもる」様が霧状の天の川に似て。〈夏至今日の皿の窪みの生卵/柿本多映〉皿の窪みに広がる黄身と白身と皿の外縁は中世の天体図めいて。

月光を曳く寒鯉の力かな 柿本多映